〈連携企画〉大阪国際大学×大阪日日新聞
学生が授業で記者に挑戦

住むだけで繋がる支援 シェアハウスめぞんQ

住居者や訪問者が持ち寄った飲み物や食べ物
住居者や訪問者が持ち寄った飲み物や食べ物

 多様な性を生きる人やその周辺の人と女性のためのリソースセンター、NPO法人「QWRC(くぉーく)」(大阪市北区、梨谷美帆理事長)がシェアハウス「めぞんQ」を運営している。性的少数者(LGBT)や性的少数者を理解・支援する人(ALLY)など、同施設でのライフスタイルを尊重できる人は誰でも住むことができる。「いろんなセクシュアリティー(性の在り方)の人がいて当たり前」という同法人の思いが詰まった施設だ。

 現在、20~40代の当事者やALLYが在住。生活のベースとなる家で安心して暮らすことができない人や、同法人の活動を支援したい人が住んでおり、家賃収入は同法人の活動費に充てられる。住むだけで活動を支援できるため、複数の人で一部屋を借り、別荘のような使い方をしている人もいる。

 2022年3月のオープン時からトラブルはなく、住民はリビングで落ち合ったら話したりするなど、穏やかに静かに暮らしている。

個人が尊重される場所

みんなで使用できる供用スペースのキッチン
みんなで使用できる供用スペースのキッチン

 同施設の管理人でもある梨谷理事長は「セクシュアルマイノリティーは、家族など周りの人はマイノリティーではないことが多い」と指摘。「家族に理解してもらえず家に居づらいなど、生活のベースで安心できないのはしんどいこと。個人の在り方が尊重される場所にしたい」と同施設を造った理由を話す。

 2階建てで、1階のリビング・キッチン・風呂・トイレは共用。個室は6室で備え付けの家具があり、共用スペースにはシャンプーも用意されており、手ぶらで入居できる。入居には試泊が必須で、雰囲気や住人との相性などを確かめる。家賃は3万5千円~6万5千円。

 当事者もALLYも住めるようにした理由について、梨谷理事長は「セクシュアリティーはマイノリティーの人だけのものじゃなくて、マジョリティーの人もセクシュアリティーを持っているから、そういう人としてそこにいてほしい。独自のセクシュアリティがあって、一人の個々人がその人の在り方として尊重される場所がいいから」と説く。

 今後については「余っている1室を活用してイベント企画したり、堺市の人と交流したり、LGBTフレンドリーをうたわないでもイベントしていきたい。カムアウトして親とトラブルになった際などに1、2泊できるようなシェルター的なこともしたい」(梨谷理事長)と意欲を示す。

取材後記
 シェアハウスでの生活は孤独感を減らし、生きやすいものになっていると感じた。誰でも住むことができるシェアハウスが、居場所の選択肢としてもっとメジャーなものになっていけば、高齢者の社会的孤立の防止など、さまざまな問題の解決に近づくのではないかと思った。(天野海美)