〈連携企画〉大阪国際大学×大阪日日新聞
学生が授業で記者に挑戦

自分の取材について順番にプレゼンテーションを行う学生ら
自分の取材について順番にプレゼンテーションを行う学生ら

 大阪国際大と大阪日日新聞、週刊大阪日日新聞が協働し、大学生たちが新聞記者の仕事を実践するアクションプログラム(担当教員・尾添侑太講師)を同大学で実施した。2、3年生の学生4人が自分たちでテーマを見つけ、人と会って取材し、記事を作成した。新聞離れが顕著な大学生に新聞に興味を持ってもらうとともに、活動を通して学内外のさまざまな人たちとのコミュニケーションを図り、自分の意見を形成することを学んでもらうことが狙い。

 学生たちはアポの取り方、質問の作り方、実際の取材、記事の書き方などで試行錯誤を繰り返し、それぞれ一本の記事を仕上げた。4人が取り上げたテーマは「放課後の居場所」「住むだけでつながる支援」「ノートテイク」「さまざまな可能性を持った銭湯」で、今回の特集では「放課後の居場所」と「住むだけでつながる支援」の二つを紹介する。他の記事も順次、大阪日日新聞、週刊大阪日日新聞に掲載する。

放課後の居場所 TEENS BASE

中高生スタッフとのムービー作成の打ち合わせをする広瀬さん(右)
中高生スタッフとのムービー作成の打ち合わせをする広瀬さん(右)

 自治体などと連携して子ども支援やまちづくりの事業を行うNPO法人「トイボックス」(大阪市浪速区、栗田拓代表理事)の広瀬麻以子さんは「10代による10代のための放課後ヒミツキチ」をキャッチフレーズとする「TEENS BASE(ティーンズベース)」(大阪府門真市)を運営している。10代の子どもたちのやりたいことが尊重される場所、安心できる場所として無料で居場所を提供している。 

 同施設のイベント参加者だけでなく、スタッフにも10代の子どもたちがおり、自ら手を挙げて運営に携わっている。季節ごとのイベントなど、子どもが興味を持つことに一緒にアイデアを出したり、子どもが行き詰まった場合には助言したり、全力で応援してくれる居場所だ。

 オープンは2022年4月で、場所は門真市民プラザ3階。コロナ禍で試行錯誤しながらも昨年7月、市の許可を経て夏祭りを開催した。企画の発案から出店内容の決定まで子どもたちで実施。フランクフルトやガチャガチャは必ず設置したいなど次々と案が出た。大人が提供した環境で、子どもたちが準備された企画を行う施設は少なくないが、企画の内容から子どもたちが考える施設は珍しいという。 

 広瀬さんは「大人がもう少し助ける必要があると考えていたが、自発性が高く頼もしい」と振り返り、運営していたスタッフも「多くの人に楽しんでもらうことができ、有意義な時間だった」としている。

安心安全な居場所の需要

「秘密基地」を意識し、落ち着く木の色合いが生かされた自由スペース兼受付
「秘密基地」を意識し、落ち着く木の色合いが生かされた自由スペース兼受付

 居場所がないことで、薬物や詐欺などの犯罪に巻き込まれる子どもは少なくない。最近ではトー横(東京都新宿区歌舞伎町にあるTOHOシネマズの周辺地区の俗称)やグリ下(大阪・ミナミの道頓堀川にかかる戎橋の下)と呼ばれる少年少女らのたまり場が社会問題化。地域住民や子どもたちからも「安心できる場所」を求める声が高まっている。 同施設では開所時間を学校の部活動と同じ時間帯に設定。会員証を作り、行き帰りに確認してもらうなど、「安心安全」のためにさまざまな工夫を凝らしている。

 心理面では、大人が子どもたちが語る夢ややりたいことについて「まずはやってみる」を後押しする声がけと環境を提供するよう努めている。広瀬さんは関わった子どもたちに対し、「世界は広い。自分の今いる場所だけが居場所じゃない。思い切って飛び出してほしい」と願っている。

取材後記
 10代の子ども達自らが主体的になり、0から1を創ることのできる環境は本当に貴重である。心身の安全が保たれるからこそ子どもは自由に考え発言できるのだと感じた。(粟津銀之佑)