1日約50万人が行き交う「ヒガシの玄関口」京橋駅。梅田、なんば、天王寺に次ぐ〝第4のターミナル〟と称される一方、駅前の再整備が長年進まず、街の更新は遅れてきた。その大きな要因が、JR片町線・東西線が地上を走り、駅や線路、踏切によって街が分断されている構造にある。京橋は都市の結節点でありながら、交通動線が“つながらない街”だった。
しかし、この停滞に昨年5月、転機が訪れた。大阪市が、休止していた連続立体交差事業を別線地下化方式で再始動すると発表。さらに今月、対応方針を「事業継続」と決定し、来年度の当初予算案に設計調査費が盛り込まれた。(西山美沙希・森陽一)

地下化でホーム移設、踏切撤去へ
地下化の対象は、JR片町線(学研都市線)の「京橋」駅を含む都島区片町2丁目から城東区新喜多2丁目までの約1.3㌔㍍。現在地上を走る線路を約100㍍北側に移し、地下に新たな線路と駅を整備する計画で、新ホームは地下2階、2面2線構造となる。
地下化に伴い、京橋〜鴫野駅間の「新喜多」「馬の口」「鯰江(なまずえ)」の3踏切も撤去となる。特に鯰江踏切は、ピーク時に1時間のうち45分以上遮断される〝開かずの踏切〟として知られ、車両や歩行者の大きな障害となってきた。
また、この再整備により、京阪・大阪メトロ「京橋」駅からJR片町線・東西線への乗り換えがスムーズになる。話を聞いた市建設局鉄道交差担当の松野雅晃課長は「駅の集約によって、現在よりも乗り換え時間が約1.4分短縮される見込み」と話す。

なぜ今動き出したのか
同事業は2000年に着工準備区間として採択されたものの、市の財政難や他の大型事業への集中投資が優先され、14年に一時休止されていた。
状況を変えたのが、都市戦略上の位置づけの変化だ。22年の「大阪のまちづくりグランドデザイン」、昨年策定された「大阪城公園周辺地域まちづくり方針」により、京橋は大阪城公園、森之宮、大阪ビジネスパーク(OBP)を結ぶ結節点として位置付けられた。単なる駅前整備ではなく、都市構造の見直しを図る基盤整備として、地下化の意味合いが強まった。
事業費は約1031億円。30年度に事業認可、33年度に着工し、51年度に地下化切り替え、53年度に現在の線路やホームなどを撤去して事業完了となる長期プロジェクトだ。
大阪市が対応方針を「事業継続」に決定
大阪市は2月19日、令和7年度大阪市建設事業評価(大規模事業評価・事業再評価)における有識者の意見を踏まえ、「JR片町線・東西線連続立体交差事業」の対応方針を「事業継続」と決定した。対応方針の判定理由として 、踏切の撤去による道路交通の円滑化と踏切事故の解消、京橋駅周辺におけるまちづくりの機運が高まってきていること、そのために必要な基盤整備の一つであることなどが記されている。
合わせて公表された市の26年度当初予算案では、「京橋駅周辺におけるまちづくりの推進」として2億6800万円を計上。そのうち2億2000万円をJR片町線・東西線地下化に伴う設計調査費に充てる。再評価での継続決定と予算が計上されたことで、地下化の実現に向けた具体的な検討がこれから進められるだろう。
まちの価値押し上げるエリア連携
京橋駅前は今後、「人中心の広場を備えた拠点空間」として整備される計画で、JR地下化で生まれる線路跡地やイオン(旧ダイエー)京橋店跡地との一体利用も見込まれる。民間による再開発計画に期待が高まっている。
京阪ホールディングスは30年までに周辺エリアの再開発に着手する方針を明らかにしており、京阪「京橋」駅直上に商業施設やオフィス、ホテルなどを備えた高層ビルの建設が検討されている。
市計画調整局地域開発担当の中山淳課長は「大阪城公園周辺地域は、NTT西日本のオープンイノベーション施設や、大阪公立大学森之宮キャンパス、大阪ビジネスパークのICT企業との連携により、国際観光やイノベーションの拠点として大きな可能性を持つ。京橋の新たなイメージを発信するまちづくりを推進していきたい」と語る。


分断解消で存在感増す国際拠点OBP
約26㌶に16棟の高層ビルが集積するオフィス拠点「大阪ビジネスパーク」は、事業所数・就労者数ともに増加傾向が続き、高い稼働率を維持している。大阪ビジネスパーク協議会の運営委員長を務める藤川敏行さんは「大阪城公園駅と京橋駅の双方が徒歩圏で、複数路線が利用できる交通利便性が企業集積を支えてきた」と見る。その上で「片町線の地下化により線路や道路による分断が整理されれば、京橋との往来はさらにしやすくなる」と再整備に一定の期待を示す。
OBPの中央を南北に貫く「パークアベニュー」は、市の計画で歩行者ネットワークの軸線に位置付けられており、京橋方面への動線強化やにぎわいの創出も視野に入る。既存の業務機能に交通基盤の再編が重なれば、エリア全体の回遊性と都市価値は一段と高まる可能性がある。
駅の地下化という〝ハード整備〟をきっかけに、交通・業務・観光・交流機能を重ね合わせる都市再編が動き出す。長年足踏みしてきた京橋は、ようやく次の段階に進み始めている。

