JR・京阪・大阪メトロの3社が乗り入れる京橋駅は、1日あたり約40万人が利用する大阪第4のターミナルだ。「ヒガシ」の拠点として長らく親しまれながらも、駅前には雑居ビルや昭和の面影を残す商店が立ち並び、エリア全体の再整備は長年の課題となってきた。そうした中、大阪市は先月「JR片町線・東西線連続立体交差事業」を別線地下化方式で再開すると発表。再開発が停滞していた京橋に、大きな変化の兆しが見え始めた。


大阪城公園周辺地域都市再生緊急整備協議会の資料をもとに作成
地下化でホーム移設、踏切撤去へ
地下化されるのは、JR片町線(学研都市線)の「京橋」駅を含む都島区片町2丁目から城東区新喜多2丁目までの約1.3㌔区間。現在、地上を走る線路を約100㍍北側へ移設し、地下化する予定。新たな駅ホームは地下2階に整備され、2面2線構造となる計画。事業費は約1031億円。2030年度に事業認可、33年度に着工、51年度に地下化切り替え、53年度に現在の線路やホームなどが撤去され、事業完了となる長期プロジェクトだ。

地下化に伴い、京橋~鴫野駅間にある「新喜多」「馬の口」「鯰江(なまずえ)」の3カ所の踏切が撤去される。中でも「鯰江」踏切は〝開かずの踏切〟として知られ、ピーク時には1時間のうち45分以上も遮断されることがある。また、「新喜多」踏切は京橋駅に近く、通勤・通学時間帯には多くの車両や自転車、歩行者が足止めされ、地域の大きな交通障害となっていた。地下化と踏切撤去により、交通渋滞の解消と安全性の向上が期待される。

さらに、駅が約100㍍北に移ることで、京阪・大阪メトロ「京橋」駅からJR片町線・東西線への乗り換えがよりスムーズに。市建設局鉄道交差担当の松野雅晃課長は「駅の集約によって、現在よりも乗り換え時間が約1.4分短縮される見込み」と話す。

再始動の背景
この連続立体交差事業は00年に着工準備区間として採択されたが、当時の市の財政難や、阪急淡路駅付近の高架化、うめきた地区でのJR東海道線支線地下化など、他事業への集中投資が優先されたため、14年に一時休止されていた。
その後、22年の「大阪のまちづくりグランドデザイン」、先月に策定された「大阪城公園周辺地域まちづくり方針」により、京橋エリアの再開発機運が再燃。都市構造の見直しを図る基盤整備として、事業が再始動するに至った。
分断された街をつなぐ
京橋駅周辺の整備が進まなかった最大の要因は、JR片町線が地上を走り、地域内の道路が分断されていたことにある。今回の事業により、長年凍結されていた都市計画道路「豊里矢田線」と「玉造筋線」の整備方針も示された。
■豊里矢田線の整備
豊里矢田線は、国道1号「桜小橋」交差点から南下し、片町線の「新喜多」踏切を越えると寝屋川に差しかかるが、そこに架かる橋は一方通行。南行きの車両は通行できない。川の手前で左折し、大きく迂回しなければならないのが現状だ。

また、城見通と交差する「鴫野西2」交差点から北に向かうと、寝屋川に達することはできない。今回の整備方針では、こうした「ブツ切れ」状態の区間を1本の幹線道路として整備し、森之宮東部~OBP(大阪ビジネスパーク)東部~京橋駅東側~国道1号までを結ぶ直線的な道路に再編する。
市建設局街路課によると、桜小橋交差点以南は片側2車線、全4車線で整備予定。現地では、フェンスで囲まれた敷地や絞られたガードレール区間が点在しており、用地買収が進んでいる様子が確認できる。
■玉造筋の延伸
OBPからJR大阪環状線に沿って北上する玉造筋も、寝屋川で行き止まりになっている。現在は、歩行者のみが通行できる幅の狭い橋が架けられており、渡って東に約70㍍歩くとJR京橋駅南口に着くが、そこから京阪・大阪メトロの京橋駅や国道1号へは大きく迂回しなければならない。
この区間については、都市計画道路から歩行者ネットワークへと計画が見直され、OBPからJR・京阪の乗り換え広場、国道1号までをつなぐ歩行者空間として再整備する方針だ。

高まる民間再開発への期待
京橋駅前は、今後「人中心の広場を備えた拠点空間」として整備される計画だ。南海なんば駅前を車中心から人中心の空間として再編した「なんば広場」のように、駅前の風景が大きく様変わりする可能性がある。
また、JRの地下化によって生まれる線路跡地やイオン(旧ダイエー)京橋店跡地との一体利用も見込まれており、民間による再開発事業の本格化が期待される。

京阪ホールディングスは、30年までに周辺エリアの再開発に着手する方針を明らかにしており、京阪「京橋」駅の直上に商業施設やオフィス、ホテルなどを備えた高層ビルの建設が検討されている。
市計画調整局地域開発担当の中山淳課長は「大阪城公園周辺地域は、NTT西日本のオープンイノベーション施設や、大阪公立大学森之宮キャンパス、OBPのICT企業との連携により、国際観光やイノベーションの拠点として大きな可能性を持つ。京橋の新たなイメージを発信するまちづくりを推進していきたい」と語っている。
