常に弱者視点に立つ制作姿勢から〝反骨の人〟と呼ばれ、70年近く演歌・歌謡界に作品提供してきた作詞家、もず唱平。彼の自選集CD「服(まつろわ)ぬ作詞家」 発売と、88歳の米寿の誕生日を記念する公演「88Years Festiva」が大阪・スペース14で開かれ、全250席を満席にする盛況ぶりを見せた。

もずは神奈川県で生まれ、幼少期から大阪で育った。旧満州に単身赴任していた父は終戦で失職し、母が貧しい生活を支えた。長じて文学青年となり詩人の喜志邦三(1985年、85歳で死去)に師事、歌謡曲作詞を学んだ。
デビュー作「釜ケ崎人情」(67年・三音英次)で日雇い労働者、大ヒット曲「花街の母」(73年・金田たつえ)で花街に暮らす母子を取り上げ。その後も中国残留孤児や春をひさぐ少女、前科前歴を抱え社会復帰を目指す者、厳しい自然の中で働く男ら高度経済成長と無縁に黙々と生きる人々を題材に歌詞にし、現在は太平洋戦争で日本本土の盾となり県民の4人に1人が亡くなった沖縄県に活動拠点を置いている。

この日は、門下生の川中美幸をはじめ、作品を提供した鳥羽一郎、中村美律子、成世昌平ら一流歌手が出演。一般的なもず作品としては川中が「あんたの春」(91年)、鳥羽は「泉州春木港」(98年)、中村が「大阪情話~うちと一緒になれへんか~」(90年)、成世は「はぐれコキリコ」(2002年)が知られるが、そのヒット曲を今回歌ったのは鳥羽だけ。残る3人は自選集CDに収められるなど地味だがメッセージ性の強い楽曲を切々と歌い上げた。

客席には日本維新の会幹事長・中司宏衆院議員、公明党参院幹事長・石川博崇参院議員、元官房長官・元文科相の平野博文・元衆院議員ら国政関係者はじめ、あらきとよひさら作詞・作曲家仲間も多数駆け付け。
途中には、文化功労者でお笑いタレント西川きよしやシンガーソング・ライター円広志、歌手石川さゆりらが次々登場。もずとの秘められた交流エピソードを明かした。

もず自身は「今日は曲と歌手が主役」と話し最後まで登壇せず、終演後は来場者を立礼で見送り。報道陣の問いかけに対し「良き先輩や周囲の人々のおかげでここまでやってこられた。今日は歌い手の皆さんが頑張ってくれ、とてもよいステージにしてくれました」と笑顔で会場を後にした。
(畑山博史)
