大企業の賃上げ報道が相次ぐ一方、中小企業や小規模事業者の経営環境は厳しさを増している。人手不足で採用は難しく、最低賃金の上昇で人件費もかさむ。仕入れ価格や物流費が上がっても、取引先や消費者に十分転嫁できない。実際に、国税庁の令和6年度分会社標本調査によると、赤字にあたる欠損法人の割合は60.3%に上る。法人全体で見ても利益を出し続けることは容易ではない。
こうした状況にある中小企業や小規模事業者に、「ネットショップ運営」と「経営者コミュニティ」の両輪で支援に乗り出したのが、ECパートナーズの山﨑寛幸社長だ。経営者が本業を守りながら、もう一つの収益の柱と、相談できる仲間を持てる支援の形を広げている。

収益分散で本業を守る
「本業一本で、この先も会社を守り続けられるのか」。中小零細企業の経営者にとって、その不安が現実味を増す中、同社は、経営者が本業を続けながら負担を抑えて参加できる共同運営型のネットショップを展開している。
現在、加盟企業は200社を超え、1店舗あたりの平均売上は月150万〜200万円規模。加盟企業には、契約内容に応じて毎月5万〜8万円程度の収益が生まれているという。
「ECを始めるというと、どうしても〝簡単に稼げる話〟のように受け取られることがある。しかし、私たちが伝えたいのは、経営者が本業に安心して取り組めるように、第二の収益の柱を育てるという考え方だ」と山﨑社長は力を込める。
一昔前なら、「ネットで収入をつくる」という言葉に、どこか怪しさを感じる人も少なくなかった。実際に、山﨑社長自身もそう感じていた。「だからこそ、短期的な利益や過度な期待をあおるのではなく、あくまで経営の備えとして位置づけている。もう一つの収益の柱があれば、経営判断にも少し余裕が生まれる」と話す。
作業者にしない仕組み
同社が展開する共同運営型ECの特徴は、経営者をECの作業者にしない設計にある。山﨑社長は「経営者にとって一番大事なのは、本業に集中できる時間だ。ECの細かな作業に追われて本業が回らなくなってしまっては意味がない。このため、仕組みとして役割を分けることを重視した」と説明する。
具体的には、商品の選定や広告の運用、顧客への対応、配送などの手間がかかる実務は同社側で担い、加盟する経営者は、意思決定や契約、収益の確認を行う。自社で人を雇ってEC部門を立ち上げるのではなく、必要な実務を本部と分担しながら運営できる点が特徴だ。
同社が目指すのは単なる副業支援ではなく、経営者が一つの収益源に依存しすぎない状態をつくり、資金面の不安を少しでも和らげることだ。
「売り上げが少し落ちただけで、次の挑戦ができなくなる会社は少なくない。逆に別の収益が少しでもあれば、人を採用したり、設備を入れたり、広告宣伝をしたりという判断もしやすくなる。経営者に〝もう一つの収益の受け皿〟を用意することで本業の経営判断に選択肢が増えると考えている」と山﨑社長は話す。

独立後に感じた孤独
山﨑社長が同事業を始めた背景には、自身が独立起業で味わった苦労がある。もともと大手国内製薬メーカーのMR(医薬情報担当者)として活躍していたが、コロナ禍をきっかけに〝MR不要論〟の加速を肌で感じ、早期退職を選択した。
その後、障がい福祉事業や美容商材の輸出業で起業したが、「何をすればいいか、誰に相談すればいいか分からない」という孤独に直面する。「会社員時代は上司や同僚など困ったら聞ける人がいたから何となく道筋が見える。しかし、独立すると資金繰りや営業の仕方、将来への不安など悩みは増える。一方で、本音で相談できる相手もいなかった」と振り返る。
こうした経験から、同社はEC事業の加盟店でつくる経営者コミュニティの運営にも力を入れている。
「経営者は強く見せなければならない場面が多い。でも本当は迷うこともあるし、不安になることもある。そういうとき、利害だけでなく本音で話せる相手がいるかどうかは大きい」と経験をもとに話す。
中小経営者を支える仕組みに
日本の企業の大半を占める中小零細企業は、地域の雇用や暮らしを支える存在だ。その経営者が孤立し、資金面の不安を抱えたままでは、新しい挑戦は生まれにくい。
山﨑社長が見据えるのは、EC事業を通じた「経営者の支え合い」の仕組みだ。「収益の柱を一つ増やすことは、経営者の不安を和らげる。相談できる仲間がいることは判断の孤独を減らす。この両方があってこそ、経営者は本業に力を注ぐことができる」と指摘したうえで、「日本を元気にするには、中小零細企業が元気でないといけない。地域で雇用をつくり、取引先を支え、家族や社員を守っている経営者はたくさんいる。その人たちが安心して本業に打ち込める環境をつくりたい」と話している。
