観光庁は、住宅宿泊事業法に基づく「民泊」について、自治体が条例で住宅地などでの通年営業を禁じることを容認する方針を固めた。騒音トラブル等を受け、近く自治体へ通知する。大阪市で大半を占める特区民泊は対象外となる。

住宅地の民泊規制、事実上禁止も 観光庁、自治体へ法解釈通知へ
観光庁は、住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法に基づく「民泊」について、自治体が条例で住宅地などでの営業を事実上禁止することも可能とする法解釈を、7月中に全国の自治体へ通知する方針だ。国はこれまで、年間を通じて営業できなくする規制には否定的だったが、騒音やごみ出しなどのトラブルが広がっていることを受け、地域の実情に応じた規制を認める方向へ転じる。実際に規制するかどうかは各自治体に判断させる。(加藤有里子)

観光庁、自治体へ法解釈通知へ 大阪市で最多の特区民泊は対象外
観光庁の村田茂樹長官が6月17日の記者会見で明らかにした。通知は、法的な拘束力を持たない「技術的助言」として出す方向で検討している。
民泊新法では、生活環境を守るため必要があれば、自治体が条例で地域を指定し、営業できる期間を制限することが認められている。ただ、観光庁はこれまで、住宅地などで一年中営業できなくする規制は適切ではない、との立場を取ってきた。
しかし、制度が始まった2018年から7年が過ぎ、閑静な住宅地などにも民泊が増加。宿泊客による騒音やごみ出し、事業者と連絡が取れないといった問題が各地で起きている。
通知では、多数の宿泊客が行き来することで、住宅地の静かな生活環境や学校周辺の教育環境が損なわれる恐れがある場合、自治体が条例で民泊の営業を制限できるとの考え方を示す。地域の実情に応じて、事業者に騒音計やカメラの設置を義務付けることも可能とする方向だ。
観光庁の担当者は「国が全国一律の規制を設けるものではなく、法律をどのように解釈できるかを自治体に示すもの」と説明する。条例を改正するかどうかや、どの地域を対象にするかは各自治体の判断に委ねられる。
対象は「民泊新法」
今回の通知でいう「民泊」は、住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法に基づく住宅宿泊事業を指す。一般住宅などを使い、宿泊客を受け入れる制度で、自治体への届出によって営業できる一方、営業日数は年間180日以内に限られる。
一般に「民泊」と呼ばれる施設には、旅館業法に基づく簡易宿所や、国家戦略特区法に基づく特区民泊もある。大阪では、戸建て住宅や共同住宅を活用した特区民泊・簡易宿所も「民泊」と呼ばれることが多いが、今回の通知は簡易宿所や特区民泊を直接対象としたものではない。
大阪市は現在、民泊新法に基づく施設については、一定の住居専用地域や学校周辺で営業できる期間を条例で制限している。
自民党提言も背景に
背景には、自民党外国人政策本部が6月9日にまとめた「第2次提言」も影響している。提言は「各種民泊の適切な運営確保」を掲げ、無届け民泊を仲介サイトから確実に削除する仕組みの整備や、不適切な事業者の実態を夜間も把握し、処分につなげる方法の検討などを政府に求めている。
大阪市は特区民泊が9割超
大阪市で圧倒的に多いのは、今回の通知の対象ではない特区民泊だ。全国との比較では、内閣府の26年2月末時点の集計で、全国8664施設のうち9割超が同市内に集中している。
一方、市内の制度別件数を26年3月末時点で比較すると、特区民泊の施設が8360で居室が2万2995、民泊新法に基づく施設数が2249、簡易宿所が557となっている。このほか、旅館やホテル営業は1297施設ある。
市の担当者によると、苦情に関する集計を施設形態別でカウントしているが、苦情を申し出た人が施設の制度上の区分を把握していない。このため、相談を受けた段階では特区民泊、簡易宿所、民泊新法のいずれに関するものか分からない場合もあるという。
市は増える特区民泊に伴う住民とのトラブルを受け、監視や指導を強化。5月29日には特区民泊の新規申請の受け付けを終了した。すでに認定を受けた施設は引き続き営業できる。
今回の通知は、市内で最も多い特区民泊には直接及ばない。市が民泊新法に基づく施設について現行条例を見直すかどうかに加え、制度の異なる施設を含めた民泊対策を今後どのように進めるかが注目だ。

