米・イランの戦闘終結覚書が発効した。最長60日間掛け、最終合意を目指すが「ホルムズ海峡安全航行」を〝人質〟に取ったイラン側勝利は間違いない。イスラエルの暴走と〝気まぐれ〟トランプの予測不能な言動は不安要素だが、先のG7サミットでも欧州と日本などアジア各国が連携し事態収束に動き出した。
イラン攻撃で日本はナフサ・ショックと世界的先行き不安による超円安に襲われ、庶民は物価高騰に苦しむ。今年後半の日本が取るべき政治経済の道筋を読み解く。

今秋決まるトランプ、ネタニヤフの運命 結果を見て動ける高市首相の勝ち!
トランプ氏、生涯初の屈辱
今回の覚書内容を確認してみよう。イラン側は制裁解除と販売許可で年間最大9兆7000億円の石油収入を得るうえ、欧州やアジアにプールされ米国の要求で凍結されていた最低16兆円の金融資産がすべて利用可能となり、最大の要求を実現した。米国がホルムズ海峡の封鎖を解き、イランが60日間通航料を徴収しないことは、実質的な海峡管理権の委譲を意味する。国際法違反の恐れがある通航料徴収も、61日目以降に「サービス料」名目で可能と読み取れる。また、米国と同盟国の協力でイラン国土復興に48兆円を供出するが、これはイラン側が「賠償金」、米国側が「民間投資」と呼ぶ事実上の金銭支払いだ。
一方、イランは今後も核兵器を持たず、濃縮ウランは国内で処理するとした。イランは一貫して核の平和利用を主張しており、放棄確約は痛手ではない。トランプ氏は2015年のオバマ政権による『イラン核合意』を非難して一方的に離脱し、中東不安定化を招いた張本人だが、今回の覚書は当時の合意よりかなり後退しており恥ずかしい限りだ。互いの内政に関与しないとの取り決めも、ハメネイ師殺害から始めた攻撃の末に、イラン現体制転覆を「諦めた」という意味である。ベネズエラのような強制的政権交代の試みが、イスラム教の集団指導体制国では無駄だったことを認めた形だ。
イスラエルのネタニヤフ首相は10月に総選挙を控え、国内で長引く国外派兵への反対勢力が台頭している。政権は風前のともしびで自身の汚職疑惑もあり、今後も徹底抵抗することは間違いない。現に覚書発効後もレバノン攻撃を続けている。
口では強気でもトランプ氏の本音は「中東はもうこりごり」だ。絶対に間違いを認めない彼にとって生涯初の露骨な屈辱であり、「全部お前のせいだ」と内心憤っている。ネタニヤフ首相が戦闘継続を画策しても米国の武器供給がなければどうにもならず、すべてトランプ氏の胸三寸だ。

簡単に収まらぬナフサ危機
日本の当面の関心事は「ナフサ・ショック解消」だが、「令和のコメ騒動」より問題は根深く危険だ。
コメ不足は備蓄米放出で乗り切ったが、ナフサは中東からの直接輸入が多く、他産地からの原油精製や新たな製品輸入で直ちに補うことは困難だ。ナフサは家庭でごみとして捨てる廃プラから住宅建築、家電に至るほぼ全ての原材料であり、不足すれば目に見えない形で日本産業をじわじわと締め上げ、中小企業の倒産増加を招く。
解消を阻む最大のネックはホルムズ海峡だ。イランが敷設した機雷除去に欧州と協力しても最低2~6カ月はかかる。そのタイムラグが日本のサプライチェーンに影を落とし、7~8月は品不足がピークに陥る。その後も戦災復興費が上乗せされ価格の高止まりは続く。EUでもEV普及が減速する中、原油輸入先を多角化する努力を怠ってはならない。

頼りは元財務官僚トリオ
「安倍首相の後継者」を自認しトランプ氏に取り入った高市首相は、表面上同調しつつ裏ではしたたかな面従腹背を計画している。
覚書期限の8月まではにこにこ従えばよい。10月にネタニヤフ政権の行く末が決まり、11月にはトランプ氏の命運が決する米国中間選挙がある。共和党が敗れると2年後の大統領3選ができず、党内は「ポスト・トランプ」へと走り出しトランプ氏は死に体となる。
結果を見定めた高市首相は来年からゆっくり動き出せばよい。直近の国政選挙は再来年夏の参院選で、時間は十分過ぎるほどある。日米同盟を維持しつつ経済安保と防衛力強化をアジア・大洋州との連携で図る手はずだ。超円安と原油高のダブルパンチを国債頼みの補助金で覆い隠すのは限界に来ている。

「レパトリ」で活路開け!
超円安には一時的な為替介入より、レパトリエーション(海外資金の本国還流)政策が効果大だ。大手輸出産業が海外にプールする利益に対し、政府が「2027年度中に日本に戻して国内投資や賃上げに回せばゼロ課税にする」と命じればよい。
経産省や財界は支持するが、財務省や米国は反発する。米国には「これ以上の円安は米国の貿易赤字を増やすだけ」と説き、財務省にも「国債でない真水で経済活性化できる」と説けば抵抗は緩む。積極財政派の高市首相は財務官僚の天敵だが、懐柔役として片山さつき財務相、本田悦朗氏、高橋洋一氏の「元財務官僚トリオ」が頼りになる。
資金が還流すれば為替は一気に円高へ振れ、国内投資にも寄与できる。これに「食料品消費税1%」を組み合わせれば完璧だ。有権者が求めるのは「変化」であり、日々の支払いで実感させられる新政策は、高市首相にしか実現できない代物なのだ。
