
高市早苗総理が誕生して3カ月。年明けすぐの「総選挙」に加え、大阪では過去の連立では考えにくかった「与党同士が小選挙区で議席を奪い合う」構図が、ほぼ19選挙区で起きている。
投開票日の来月8日は、府知事・大阪市長の辞任に伴う出直しW選(知事と市長のダブル選)も同日。国政と大阪政治が一気に動く局面だ。参院や地方議会にはない憲法の仕組み「7条解散」(首相の判断でできる解散)をいま一度整理し、自民・維新が激突する大阪小選挙区の現在地、さらにW選の先にある「3度目の都構想住民投票」への道筋を考えたい。
後に引けぬ吉村流 都構想一直線
安倍路線復活の是非
衆院で新総理が選ばれると、すぐ解散して信を問う流れが常態化してきた。岸田総理は発足10日後、石破総理は8日後。高市総理の解散は、むしろ「遅い」部類という見方すらある。自民党内には「解散をするほど総理は強くなり、内閣改造をするほど弱くなる」という言葉もある。選挙に勝てる総理は心強いが、改造を重ねると人材が薄くなる、という与党側の感覚だ。
新年度予算の成立前に解散に打って出たのは「予算に自分の色を出したい」という意思表示でもある。積極財政(財政出動に前向き)の立場から「食品消費税2年間ゼロ」を掲げ、野党が唱える減税論を先回りして争点を握った形だ。さらに、解散会見で「これから提出する法案は賛否が割れる」と予告した以上、目指すのは〝短期決戦〟ではなく長期政権だろう。派閥裏金や旧統一教会など「政治とカネ」問題を今回の候補選びで大きく問わず、党公認や比例重複(小選挙区で負けても比例で復活できる仕組み)を戻したのも、勝ちにいく構えの表れだ。単独過半数(衆院233議席以上)を回復できれば、維新だけでなく右派勢力との連携も広げやすくなる。
一方、連立相手の維新は、議員定数1割削減、核共有、スパイ防止法、原発再稼働など、自民が前面に出しにくい政策も並べる。ただ国会・地方を通じ不祥事や離党が相次ぎ、もし自民が大勝すれば存在感が薄まる。逆に自民が負ければ国民民主の伸長を許す。どちらに転んでも難しい立ち位置だ。

解散のたび金が掛かる
衆院任期は4年だが、新憲法下での平均在任期間は2年10カ月。任期満了選挙は1回しかなく、内閣不信任がきっかけの解散は4回。これに対し「7条解散」は今回で23回目とされ、圧倒的に多い。憲法7条は天皇の国事行為(形式上の手続き)を並べ、そこに衆院解散も含まれる。ただし天皇は憲法4条で政治的権限を持たないため、実際に「いつ解散するか」は内閣、もっと言えば首相の判断に委ねられる。
解散から投票までは「40日以内」としか決まっていない。岸田17日、石破18日に続き、高市16日は戦後最短とされる。総選挙の事務費用は物価高もあり850億円規模。投開票所の設置、人件費、掲示板、選挙運動はがきなどが公費で賄われる。定数削減で年間数十億円削れるとしても、「解散せず任期いっぱい務めればいい」という疑問が消えないのは当然だ。


大阪全区で〝与党対決〟
大阪は東京に次ぐ19選挙区。小選挙区制が始まった1996年以降も、16対3、17対2、18対1といった 〝振れ幅の大きい結果〟を繰り返してきた。維新が本格参戦した2012年以降は勢力図が塗り替わり、21年は維新が伸びて自民がゼロ、24年は維新が19区全勝。勝ち負けが一気に傾く土地柄だ。
その大阪で、国政では連立なのに自民と維新が正面衝突する。維新は大半の候補で比例重複を認め、背水の構えに転じた。争点は大阪では結局「都構想の是非」に収れんしやすく、与党支持層にとって判断材料が限られる。票が割れれば、第三勢力が漁夫の利(すき間で勝つ)を得る可能性もある。

止まらない都構想
「3回目の都構想挑戦はいいけど、今じゃない」という批判は、維新党内からも公然と上がっている。前任の松井一郎・前大阪市長からも「北朝鮮か中国、ロシアみたいになっちゃう」とやゆされ、議会過半数を持たない大阪市議団も賛同せず、国会議員団の大半も反対だった。
それでも吉村代表がW選に踏み切った背景には、「国政の連立が安定しているとは限らない」という危機感がある。都構想は維新の看板だが、国政の総理にとっては優先順位が高くない。だからこそ、W選で勝ち「住民投票へ進む信任を得た」と位置づけ、来春の統一地方選と合わせて住民投票へ持ち込みたい─という読みが成り立つ。
ただ、大阪市の財政改善や府市一体運営の進展で「二重行政解消」の説得力は揺れている。衆院大阪で取りこぼせば、維新の求心力にも影響する。国政の解散総選挙と出直しW選が重なる2月8日は、制度の是非、連立の矛盾、そして都構想の次の一手までを同時に映し出す日になる。
有権者が見るべき点は大きく三つだ。①このタイミングの解散に納得できるか。②大阪19区の与党対決で、どの政策・人物を優先するか。③W選を都構想への〝前哨戦〟として認めるのか。一票が、国の政権運営だけでなく、大阪の形さえ左右する。重い。
