「大阪発」デリバティブ市場を成長へ 多賀谷新社長が抱負

 大阪取引所(大阪市中央区北浜)の代表取締役社長に4月1日付けで就任した多賀谷彰氏が7日、合同記者発表でインタビューに応じた。会場は同取引所4階のOSEホール。多賀谷氏は「大阪発のデリバティブ市場をさらに成長させたい」と抱負を語った。

大阪取引所で合同記者発表に臨み、今後の戦略を語る多賀谷彰氏(7日、大阪市中央区)

 多賀谷氏は入社37年目で、株価指数先物やオプションなどの「デリバティブ(金融派生商品)」に約17年携わってきた。日本取引所グループは東京と大阪の2拠点体制で、東京証券取引所が現物株中心なのに対し、大阪はデリバティブ取引に特化した市場を担う。新社長として、機関投資家から個人投資家まで幅広い利用者にとって使いやすい市場づくりを進める考えだ。

 市場運営で重視するのは〝流動性〟と〝健全性〟。流動性とは、売りたい時にすぐ売れ、買いたい時にすぐ買える状態を指す。多賀谷氏は「いつでも納得して取引できる環境を整えることが使命」と強調し、価格変動リスクを抑える「ヘッジ機能」の充実にも取り組むとした。

 同取引所は約140年前に設立され、大阪経済を象徴する存在でもある。近年は金融教育の拠点としても活用され、2025年は見学者約8000人、イベントやセミナーを含めると約1万5000人が来場した。今後は情報発信にも力を入れ、地域の金融リテラシー(お金の知識)向上につなげる。

 さらに、災害やサイバー攻撃などに備えた市場の「レジリエンス(復元力)」強化では、東西2拠点の連携により、システムや人員の相互バックアップ体制を整える。加えて、スタートアップ支援にも注力する。大阪が掲げる「国際金融都市」構想の一翼を担い、「大阪・関西スタートアップ支援塾」などを通じ、起業支援にも取り組む。

 新たな目玉施策として4月13日、日本で初めて円建ての「通貨先物」が上場した。米ドル/円、中国人民元/円、ユーロ/円の3商品を扱う。これにより、日経平均株価の先物や金などの商品先物と組み合わせ、為替リスクを含めた資産運用を大阪だけで完結できる環境が整った。
 通貨先物取引はこれまで海外市場、特に米国のCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループに集中しているが、国内での取引拡大を目指す。多賀谷氏は「流動性が流動性を呼ぶ」とし、取引が増えればさらに参加者が増える好循環に期待を示した。

 大阪取引所では現在、商品にもよるものの売買の約7割を海外投資家が占める。今後は個人投資家にも多様な投資手段の一つとしてデリバティブの利用を促したいとの考えで、新商品の上場や制度変更などを通じてそのための環境を整備する。同一口座で株価指数先物、商品先物、通貨先物をまとめて管理できるうえ、証拠金の減殺が可能となる点も強みとなる。

 2025年のデリバティブ取引枚数は過去2番目の水準となったという。日経平均先物の小口商品「ミニ」や「マイクロ」の拡充により、個人投資家の参加が増えたことが背景にある。

 現在注力する商品として、多賀谷氏は個別株オプション取引「かぶオプ」を挙げた。オプション取引は、あらかじめ定めた条件で「権利」を売買する仕組みで、損失を一定範囲に抑える、いわば〝保険〟のような役割(ヘッジ)を持つほか、現物株の配当のように、オプション料(プレミアム)と呼ばれる収入を得られる点が特徴だ。
 具体的には、保有株の売却価格をあらかじめ決めて売却の権利を付与することで収入を得る「カバードコール」や、一定の価格での購入を約束する代わりに収入を得る「ターゲットバイイング」といった戦略がある。いずれも、現物株を保有するだけでなく、追加収益の獲得を狙う手法として位置付けられる。
 こうした手法は、株式を長期保有する投資家にとって資産運用の幅を広げる選択肢となり、個人投資家の間で関心が高まりつつある。

 通貨先物の導入により、株価指数や商品、通貨を一体で扱える体制が整う。多様なアセットクラスを提供することで現物・デリバティブの両輪で取引を拡大し、日本市場の競争力を高める狙いだ。

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