【大阪・梅田タワマンバブル】 うめきた2期の高級マンション効果で周辺相場が急騰

 大阪駅周辺のタワーマンション価格が急騰している。分譲価格で関西最高額の25億円が話題になった「グラングリーン大阪 ザ・ノースレジデンス」が影響して、周辺の物件価格を大きく引き上げているのだ。梅田のタワマンは今、異様なバブル状態。その現状に迫った。(佛崎一成)

(左から)最上階25億円と関西最高額で話題となった建設中の「グラングリーン大阪ザ・ノース レジデンス」、キャノピーbyヒルトン大阪梅田、築11年ながら資産価値が急騰している「グランフロントオーナーズタワー」、インターコンチネンタルホテル大阪、グランフロント大阪北館

 JR福島駅から北へ約500㍍。なにわ筋から1本入った場所に建つタワーマンション「グランドメゾン新梅田タワー・ザ・クラブレジデンス」。竣工したのは今から3年前の2021年6月末。新築時に1LDKの住戸を購入した会社役員のA氏は、今年に入ってその物件を売却した。

 「5500万円で買った物件が1億1000万円で売れたんですよ」と満面の笑みを浮かべながら、「それでも売るのは早計だったかもしれない」と話した。

 都心部のタワマンが値上がりし続けて久しいが、特に今、梅田周辺のタワマンが異様に急騰している。

抽選倍率95倍も

 周辺マンションの価格をけん引しているのは「うめきた2期」(グラングリーン大阪)に建設中のタワーマンション「グラングリーン大阪 ザ・ノースレジデンス」(地上46階建て、総戸数484戸)だ。先月、一部が開業したグラングリーン大阪の公園の北側に建ち、昨秋には分譲価格で関西最高額となる25億円を付け話題にもなった。

 部屋によっては愛車を専用エレベーターで居住スペースに運び込める住戸も。このカーギャラリー付きは18階までの32戸が売り出され、いずれも抽選倍率が30〜50倍の激戦だった。

「グラングリーン大阪 ザ・ノースレジデンス」のカーギャラリー付き住戸の内観イメージ

 「(第1期販売の)平均坪単価は驚愕の950万円ですよ。抽選倍率もすさまじかった。公園の緑と淀川花火大会を望む南西角の住戸(2LDK・約120平方㍍)は最高の95倍をつけた」

 こう説明するのは大阪市内のタワーマンション売買実績で1位、「TOWERZ」のブランド名で展開するES&Company(同市中央区淡路町)の芝崎健一COO(最高執行責任者)だ。

 同物件は2期で完売したが、1期から2期に移る段階にも価格が上昇。1期で3億9900万円だった住戸(9階132平方㍍)と同じタイプが、2期では4億4800万円(10階)につり上がった。階数別の価格差を踏まえても、1期で購入した人は資産価値がすでに5000万円近くも上昇したことになる。ちなみに、一番安い部屋は9080万円(45平方㍍)だった。

 「大阪のタワマン購入に通常、東京の人は関心を示さないが、同物件に限っては注目度が高かった。その辺りも倍率の高さや価格を跳ね上げる要因だったかもしれない」(芝崎COO)

 その余波は周辺のタワマンにも及んでいる。

うめきた周辺の資産価値も上昇

 下表に記載した6つのタワマンはいずれもノースレジデンスのある「うめきた2期地区」まで1㌔圏内に建つが、坪単価が前年よりも120%─141%と大きく上昇。前々年から前年への伸びが98%─124%だから、いかにノースレジデンスの価格が影響したかがうかがえる。

 芝崎COOは「それまでグランドメゾン新梅田タワー・ザ・クラブレジデンスは坪350万円が相場だったが、徒歩圏内にあるノースレジデンスが坪950万円で取引されたことで600万円台にまで跳ね上がった。それでもまだ安いという声がある」と明かす。

うめきた2期エリア周辺のタワーマンション価格推移

販売休止で値上げ

 現在、販売中のマンションもノースレジデンスの値上がりを巧みに利用している。21年に大阪初の分譲価格10億円超えで話題になったブリリアタワー堂島は、ノースレジデンスが売られ始めると販売を休止。「ノースレジデンスが周辺価格を引き上げてくれることを予測して、販売を止めて値上げをする戦略を取った」と芝崎COO。

 実際にブリリアタワー堂島はこのほど、1年2カ月ぶりに販売を再開しており、1期で5600万円だった部屋を8500万円に値上げしているという。

 同様に済生会中津病院の北側で建設が進む三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス大阪梅田タワー」も173戸のうち、8割以上となる143戸を売った時点で販売を休止。物件ホームページには「次期以降販売につきましては当面の間販売時期が未定」と案内されている。
 「ゆっくり値段を上げながら販売していく戦略。実は、うめきたにはまだ値段をつり上げるネタが控えている」(芝崎COO)

〝本命〟は南側

 そのネタとは、グラングリーン大阪の南側に建設される〝本命のタワマン〟だ。ノースレジデンスが神殿の石柱などで王宮をイメージした造りである一方、南側のサウスレジデンスはタワマン購入者が好むガラス張りと予想されており、すでに注目度は高い。ノースレジデンスを抽選で買えなかった人が相当数いるわけだから、完売は確実視され、かなりの競争率になると予想されている。

 「北のタワマンがあれだけの大抽選だったわけだから、ディベロッパーとしては最大利益を取れるチャンスだ。坪単価は1200万円〜1500万円とも予想されている。仮に1500万円で販売されると、北のタワマンも坪1400万円くらいに値上がりするのではないか。周辺のタワマン価格も大きく跳ね上がることは間違いない」と芝崎COOは分析している。

 すでにそれを見越して3社以上のディベロッパーが、梅田スカイビル周辺にマンション用地を仕込む動きがある。

〝アンダー〟販売

 値上がりし続けるタワマンに、陰りはないのだろうか。最近は日銀の利上げが話題で、住宅ローン金利が上昇すれば不動産業界に逆風となるが…。

 芝崎COOは「金利上昇以上にタワマンの資産価値が上がっているのが実態だ。それに富裕層が増えている実感もあり、勢いが衰えているようには感じない」と説明する。実際に富裕層の世界動向をまとめた24年版「グローバル・ウェルス・レポート」によると、日本は28年までにドル建て換算で100万㌦以上の資産を持つ富裕層が28%増える見込みだ。

 富裕層の増加を裏付けるように、最近は業界で〝アンダー〟と呼ばれる販売方法が主流になってきた。わかりやすい例が、東京の麻布台ヒルズ(森ビル)にある高級住宅「アマンレジデンス東京」の販売方法だ。同物件は高さ330㍍のタワー最上部の11フロアに設けられたが、販売は完全招待制で、森ビル側が選んだ人しか購入できなかった。

 「富裕層は一般と同じ抽選販売を嫌う。特別扱いすることで購入してもらいやすいし、ブランディングにもなる」(芝崎COO)という。

大阪のタワマン市況にくわしいES&Companyの芝崎COO

 大阪でもこの〝アンダー販売〟が普及している。実際にノースレジデンスも484戸中、248戸がアンダー販売だった。

 現在、販売中のタワマンもアンダーの戸数を確認することができる。物件ホームページを訪れ、物件概要の総戸数の部分に〝募集対象外住戸〟などと書かれていたら、それがアンダー販売の戸数だ。

 タワマンバブルが続く大阪で、またも関西最高額を更新すると思われるうめきた2期エリアの「サウスレジデンス」。竣工は28年7月下旬の予定で、グラングリーン大阪の全体まちびらき(27年春ごろ)の後。同タワマンの完成で、街のすべてが完成するだけに、注目が高まっている。