
「大阪土産といえば?」そう問われた時に思い浮かぶのは、たこ焼きなどの粉物や、大阪城などの大阪らしいモチーフをあしらったお菓子だろう。実際、駅の土産売り場には〝大阪らしさ〟あふれる商品が並ぶ。そんな中、〝大阪らしさ〟に頼ることなく、新大阪駅の売り上げランキングで上位に立ち続けるお菓子がある。シェルティ(大阪市淀川区)の「Chips&tips ミルクラング」だ。商品名にも大阪の地名やモチーフはなく、パッケージにも〝大阪らしさ〟は一切見当たらない。
それでも数百種類がひしめく同駅の各店で売り上げ上位商品として並び、最大級の土産売り場・アントレマルシェ新大阪中央口店では月次発表の売り上げランキングで1位を更新し続けている。同店1店舗だけで1日最大3500個を売り上げる。その数字が、異例の支持を裏付ける。


「ここでしか買えない」
なぜ売れるのか。「大阪でしか買えない。それが一番のフックになっている」。開発から販売戦略まで自ら手がけるシェルティの山口幸平社長はそう語る。取り扱いは新大阪駅と大丸梅田店の実店舗に限り、インターネット販売は一切行っていない。
リピート生みだす5層のこだわり

さらに、ミルクラングはリピート購入が多いという特徴がある。購入者の胃袋を掴んで離さないのが、五層構造という商品設計だ。一般的な3層ではなく、ミルクチョコとクリームを重ねた5層仕立て。チョコとクリームのコクとリッチな口どけが、「もう一枚」と手が伸びる満足感を生み出している。

この5層のラングドシャは、チョコレート好きを公言する山口社長自身のこだわりから生まれた商品だが、実現への道は平坦ではなかった。製造パートナーとの交渉は当初断られ、山口社長自身が催事への訪問や工場見学を重ね、粘り強く承諾を取り付けた。その後も試作を半年以上続け、ようやく現在の味にたどり着いた。
それまで同社は新大阪駅でアップルケーキなど複数の商品を展開していたが、ミルクラングの完成を機に商品を一本化した。これまでの商品を凌げるという自信と覚悟があったからこそ踏み切れた決断だった。その判断は正しく、一度食べた客がリピーターとなり、口コミでも広がりを見せ、安定した売り上げを支え続けている。
「お客さんは正直だからおいしくなければ次は買わない。次も買ってくれる、それが全てではないか」という山口社長の言葉が、ヒットの本質を静かに語っている。
取材協力:シェルティ/大阪市淀川区宮原1丁目1−1 新大阪阪急ビル 3階/電話06(7668)8371
