映画「ゴリラホール」が描く若きバンドマンたちの夢と現実 大阪に実在するライブハウスが舞台

若者の夢と現実が交錯する青春群像劇

 大阪・住之江に実在するライブハウス「ゴリラホール(GORILLA HALL OSAKA)」を舞台にした映画『ゴリラホール』が12月13日、大阪市内の2劇場で先行公開された。大阪出身のKoji Uehara監督が脚本を手がけ、同ホールにかかわる若者たちの姿を描く青春群像劇だ。

 物語の中心となるのは、「ゴリラホール」でアルバイトをしながらバンド活動を続ける朝子と、ブレイク寸前の人気バンドでボーカルを務める壱夜。メンバーとの関係、家族、将来への不安、夢、恋。振り返る暇もないほど忙しい日々の中で、ステージに立つ若者たちの夢と焦燥、情熱が交錯していくストーリーとなっている。

〝若手ミュージシャンの目標〟としてのゴリラホール

ゴリラホール

 舞台となったゴリラホールは、大阪・住之江にある総面積約223平方㍍、2階建てで最大収容人数1300人のライブハウス。コの字型にステージを囲む特徴的な2階席や、演者との距離感の近いステージを備え、大阪のライブシーンを支えている。

 映画の中で、若者たちの憧れとなる象徴的な舞台として描かれるゴリラホールだが、実際に、この場所でのライブ開催を目標に活動するミュージシャンは少なくない。劇中ではアルバイトと掛け持ちしながら音楽活動を続けたり、ノルマ分のチケットを家族に買ってもらったりする主人公らの姿が描かれており、若いミュージシャンを取り巻く現実がリアルに描かれている。夢を追いながらも生活や将来と向き合わざるを得ない、現実的な「音楽の続け方」が、物語の背景にある。

「ゴリラホールで働く若い子たちの話を」

 今回の映画制作は、ゴリラホール側からUehara監督への要請がきっかけだった。「ゴリラホールというタイトルの映画で、そこで働く若い子たちの話を撮ってほしい」。監督はこうした条件を受け、脚本を構築したという。 

 自身もミュージシャンであり、ゴリラホールでのライブ経験もあるというUehara監督。ゴリラホールを主題にしたこと以外に、「こういったことを感じてほしいというような、特定のメッセージはほとんど設定していない」と話す。一方で、「音楽好きな人だけに届く映画にはしたくなかった。音楽を知らない人が見て響かなかったら意味がない」と語る。「世代や立場によって受け取り方が異なるが、誰にとっても理解・共感できる部分のある作品になっているはず」と話した。

 主人公・朝子を演じたAIK(あいこ)さんは、普段はソロアーティストとして活動する現役ミュージシャンで、本作が初演技となった。自身もゴリラホールに親しんできた一人で、好きな場所にバンドマンという題材で関わる作品だったことが、オーディションを受けるきっかけの一つになったという。

 初めてとは思えない自然な演技を見せたが、今後は役者業の予定はないとのこと。「今後も好きな音楽活動をメインに続けていく予定だ」と笑顔で話していた。

迫力のライブシーンに注目

 本作のカギとなる楽曲はロックバンドDragon AshのKjさんが提供。それらを朝子率いるバンド「GIRL TALKING ABOUT LOVE」が歌うライブシーンの迫力も見どころの一つだ。監督は「気合を入れて作ったライブシーンなので、音や空気感も含めて、ぜひ映画館で体感してほしい」と話した。

 本上映は2026年開始。詳細は映画「ゴリラホール」HP(http://gorilla-hall.com

(文・西山美沙希)

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