空前絶後のバブル相場
「昨年以降、大手デベロッパーから坪単価６００万円を超えるタワーマンションの販売戦略や商品企画の相談が相次ぐようになった。中には〝これから開発する物件が過去に販売したことがない価格帯になるため、どのような顧客がターゲットになるのか教えてほしい〟という案件もあった」と話すのは、大阪のタワーマンション事情に詳しい「ES＆Company」の芝崎健一COO（最高執行責任者）。大阪の「タワマン最前線」を取材した。
世帯年収１５００万円でも買えない
「えっ、こんなに高いんですか」ー。今年１月、大阪市中央区で分譲されているタワーマンションのモデルルームを訪れた田中さん夫妻は思わず絶句した。田中さんは広告代理店の営業職として勤務する３０代の会社員。妻も正社員で働いており、世帯年収は約１５００万円のいわゆる「パワーカップル」だ。将来的に子どもは２人ほしいとのことで、３ＬＤＫの部屋を探していたが、提示された価格表には「１億２０００万円」という数字が記されていた。しかも、６０平方㍍台というコンパクトな間取りでだ。
データで見ると、近年のタワマンの上昇率がよく分かる。不動産データ分析のエム・アール・シー（東京都千代田区）によると、大阪を含む関西２府４県で昨年、分譲されたタワマン（２０階以上）の平均価格が初めて１億円を超えた。ちなみに１０年前は４０００万円台で、２倍以上になっている。１９階以下のマンションの平均価格と比べるとタワマンの伸び率が高いことも印象的だ。以前は珍しかった「億ション」が当たり前になり、日本の平均的な所得の世帯はおろか、パワーカップルでさえ購入できないという異常事態になっている。
タワマン相場の主役は海外勢
「今のタワマン相場をけん引しているのは、自分で会社のお金を自由に使える、大阪地場の中小企業のオーナー社長とアジアを中心とした海外勢。そのほとんどは投資目的であり、実需の購入ではありません」と芝崎さんは解説する。
「特に海外勢はまるでショッピングを楽しむかのようにタワマンを何部屋も買っていく。円安も追い風になり、完全に〝タワマン爆買いツアー〟ですよ」と語る芝崎さん。日本のデベロッパーから見ても複数の住戸をキャッシュで買ってくれる彼らは「上顧客」。中には「アンダー販売」といって一般には売り出さず、上顧客に優先して販売することも珍しくないという。
こうなってくると気になるのが「いつバブルが弾けるのか」。しかし、業界関係者からは強気の声が聞かれる。在阪電鉄系デベロッパーの担当者は「大阪はうめきた２期、万博、ＩＲと大型開発が目白押し。土地価格や建築資材、人件費の高騰も続いている。これから土地を仕入れ、開発・販売する物件はそれらのコストを吸収した値付けになる。どこを探しても値下がりする要素がなく、まだまだマンション価格の上昇は続くだろう」と話す。
郊外にもタワマンが続々と
「高値圏で推移する市内のタワマンに比べると割安で今後の伸び代が期待できる」と芝崎さんが今注目しているのが「郊外タワマン」だ。現在、箕面市や摂津市でもタワマンが販売されているが、芝崎さんの一押しは門真市の「シティタワー古川橋」（住友不動産）だという。
同物件は地上４１階建て、総戸数６４８戸の同市初のタワマン。京阪本線「古川橋」駅北側で進む官民が一体となった再開発プロジェクト内に誕生することが大きな特徴だ。芝崎さんによると、将来値上がりするタワマンの特徴として「駅直結や駅前などの立地」「再開発や複合開発」「共用部が充実した大規模マンション」であることが重要な要素だという。「この機会を逃すともう手に入れることができない〝希少性〟が価値を生む。淀屋橋まで直通１９分の好立地な駅前で、街を作り変えるような大規模開発はそうそうないだろう」と力説する。
同市には２０２３年に大型商業施設「ららぽーと門真」「三井アウトレットパーク大阪門真」や会員制スーパー「コストコホールセール門真倉庫店」が誕生し、生活利便が高まっていることも見逃せないポイントだ。
同物件の販売を担当する住友不動産の澤村雄一さんは「まだ販売開始前で具体的な内容は公表できないが、一般的な共働き世帯にも検討いただけるよう、３ＬＤＫの価格は５８００万円台〜を予定している。間取りは７０平方㍍前後の３ＬＤＫが中心で幅広い世代の方に興味を持っていただければ」と答えてくれた。
大阪市内のタワマン購入を諦めてしまった人にこそ、今熱い「郊外タワマン」を検討してみてほしい。