【円滑な親子関係(1)】「友達に意地悪された」と言われたら、あなたならどう返す?

コミュニケーションライター/黄本恵子

人は、家族など身近な人の話ほど、聞けません。子どもの話を聞くことに関しては、特に難しいようです。子どもが「友達に意地悪された」と言ってきた場合、あなたはどう返しますか?

●「なんで?」「どうして?」「何されたの?」といろいろ質問する
●「そういう場合は~」「お父さん(お母さん)ならこうする」とアドバイスをする
●「大体あなたは~」と説教をする
●「先生に言ってあげるからね」など解決してあげようとする

子どものこんな話には、心配で、つい強い感情が入り込んでしまうもの。 

しかし、このような反応をされると、子どもは本当に言いたかったことを打ち明けられません。

子どもは、アドバイスや解決をしてほしいのではなく、悲しいその気持ちを、ただ聞いてほしかっただけかもしれません。

意地悪をされたことより、傍で見ていた先生や友達の反応に不満を抱いた話をしたかったのかもしれません。仕返しをしなかった自分を、ほめてほしかったのかもしれません。

それは、じっくり聞いていかないと分からないのです。

人は、聞かない人には、やがて話をしなくなります。本音を言わなくなります。

では、どう返せばいいのでしょうか?

子どもの話は『オウム返し』で受け取めてみましょう。オウム返しは、心理学用語では『バックトラッキング』と言います。カウンセリングで使われる聞く技術のひとつです。

オウム返しの例(バックトラッキング)

子ども 「〇〇くんに意地悪された」

親 「意地悪されたんだ」

子ども 「うん。すごく腹が立った」

親 「腹が立ったんだね…」

「うん」「そうなんだね」という相槌だけでなく、オウム返しがあった方が、子どもは「しっかり話を聞いてくれている」という感覚を得られ、胸の内を打ち明けやすくなります。

会話のスピードを子どもに合わせるのも、大事なポイントです。

子どもがゆっくり話すなら、ゆっくりと返す。子どもが早口で話すなら、早口で返す。

そうすることで、子どもはより話をしやすくなります。相手にペースを合わせて会話することを『ペーシング』と言います。話すスピードを合わせるのは、一番簡単にできるペーシングです。

話を聞く場についてですが、じっくり聞く必要のあるときは、正面に向かい合わせで座るより、横並びで隣同士に座って聞くのがおすすめです。

心理学では、正面は『対立』を表す位置と言われています。一方、横並びは、『味方』を表す位置。

座る位置を変えるだけで、ずいぶん話しやすくなるもの。聞く側も、話の内容を受け入れやすくなります。

「自分の気持ちを受け止めてもらえた」という感覚が得られると、それだけで楽になり、前向きになる子は多いものです。「こうしてみよう」と、解決策を自分で導き出す子もいます。

否定されることなく、遮られることなく話を聞いてもらえたことで、親への信頼感も増します。

原因追求や解決を急がず、子どもの気持ちに寄り添い、聞くこと。心がけたいですね。



黄本恵子(きもと けいこ)
大阪市出身。1980年生まれ。関西大学社会学部卒業。心理学について学びを深め、人間関係に悩む人々のカウンセリング業務に従事。その経験を活かし、家族間や男女間のコミュニケーションについての記事を大手WEBマガジンにて執筆。ビジネス書の編集・執筆協力にも多数携わる。米国NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー。
〈メディア出演〉ニュース番組『新・情報7daysニュースキャスター』に出演。「高齢者の親に免許返納を促す伝え方」についての記事が反響を呼び、取材を受ける。朝の情報番組『ビビット』に出演。「2歳児ができること」について紹介した記事が取り上げられる。