少子化、物価高、賃金の低迷などが続き、必ずしも好調な経済状況ではないが、新型コロナ禍も3年が経ち、社会全体も落ち着きつつある。2023年度大阪の私立中学入試の初日受験者数は7895人(昨年度7654人)で昨年度に続き10%超えの受験率11・0%(同10・6%)と〝大幅増〟となり、関西圏私立中学受験界をけん引した格好だ。
1日で2校受験可能
関西圏私立中学校の特色は午後入試が定着したことだ。多くの学校は統一入試日の初日または、2日の入試でこれまでは受験の選択肢は最大で2校だったが、午後入試を導入したことで、「受験生は1日に2校受験できる。うまくスケジュールを組めば、2日間で4校(4回)受験できることになった」(塾の入試担当)。これによって約60%の受験生が午後入試にチャレンジしたと推測されている。また、新型コロナ禍でオンライン授業をはじめ、衛生面での充実ぶりがあらためてクローズアップされ、私学の評価を高めたのも大きい。
大学付属校、進学校も安定した高い人気
大阪の共学校では大学付属校人気が続き、進学校も安定した高い人気を誇っている。関西大学の付属校は全般に受験者数を増やした。ただ、ここ数年の人気上昇が著しかった同志社香里は受験者数を減らし、「落ち着きをみせた」(塾の入試担当)格好だ。常翔学園は受験者数こそ減少したが、競争率は上昇、昨年度入試からスタートした最難関国立大学合格を目指す「スーパーJコース」への期待感も高くハイレベルな入試となった。
府内の男子校、大阪星光学院、清風、明星の3校は、いずれも受験者が増えた。女子校は、医学部・難関国公立大学への進学に強みを持つ四天王寺が増え、競争率も1・52倍と高い。医進系のコースをもつ大谷は、受験者数は減少したが、2次入試では大きく増加し、併願校としてチャレンジした受験生が多かった。
従来の学力試験(一般入試)以外にも教科学力だけで測れない受験生のポテンシャルを見い出す「自己推薦型入試」「適性検査型入試」「思考力型入試」など新しい試験を導入する学校も増えている。塾の受験担当者が「近年、増えているのが、英語入試」と話すように2015年度は6校だった導入校も23年度は52校、大阪の公立の中高一貫校が24年度入試から英語入試を採用することから、導入校はさらに増えそうだ。
大阪女学院は、国際特別入試、一般入試でも前期・後期ともに増加した。また、従来の中学受験の試験科目は4科目か3科目からの選択が一般的だったが、受験科目のスリム化も進んでいる。1科入試を取り入れている金蘭千里では、国語1科で78人(同63人)、算数1科で85人(同43人)と大きく増えた。
2024年度以降の入試動向
先行きが見えないなかで、「関関同立クラス」など付属高校は系列大学への進学がほぼ保証されていることから、今後も安定した人気を集めることになりそうだ。また、国立大、早慶、医学部などを目指す成績上位層は最難関校への挑戦が続くことになるだろう。ただ、円安による物価高など今後の経済的な動向や教育環境の変化なども影響するので、入試動向には注視することが大切といえそうだ。
94校でプレテスト実施
プレテストは「学校ごとの模試」と呼ばれる。会場も時間も本番と同じ条件で、試験問題の傾向も体験できるので、小学6年生の受験生にとっては受けるメリットは大きい。24年度の実施校は3年前と同じで94校。
常翔学園中学校では今年は10月と11月の2回、プレテスト(同校では「Jテスト」という)を実施する。2回とも入試本番を意識して作成。試験と同時に開催する保護者対象の説明会では出題に関して説明している。
常翔学園中学校の根来和弘校長補佐は「Jテスト実施後は、成績手渡し会を実施しています。対面でテストの結果をお伝えするだけではなく、今後入試本番に向けての学習アドバイス等もさせていただいています」と話している。
大阪私立中学校 プレテスト情報 2024年入試(保護者・児童対象)
※各説明会等の日程・内容などは、今後変更となる可能性があります。詳細は必ず各校のHPまたはお電話でご確認ください。
※下記日程・内容だけでなく、HP上で学校紹介資料等を掲載したり、オープンスクール・個別相談等を随時受付している学校もあります。2023年5月(大阪中高連調)