【令和版 ニチニチ子育て研究所】「小1から不登校かも」… 保護者はどう対応したらいい?

不登校イメージ

 「不登校」と聞くと、ひと昔前は中高生のイメージが強かったが、今や小学生の不登校も顕在化してきた。「頑張って学校に行ってもらわないと…」「無理やり行かさん方がええんかな…」そんな葛藤を抱く保護者も多いと聞く。本特集では、不登校支援に携わる3者から話を伺いながら、特に低年齢層の不登校の現状と、不登校の子どもとの接し方について考えたい。

 2022年度の小中学校における不登校者数は29万9048人、小学校だけでも10万5112人と過去最多。小学生の不登校者数が3万5032人だった2017年と比べても3倍に増加している。

 低年齢の不登校が増えている一因として「子どもが昔よりストレスフルな環境にあるのではないか」と不登校新聞の石井志昂さんは指摘している。また、文科省の調査(※)では、いじめの認知件数が一番多いのは小学校2年生だとも示されている。

 不登校になるきっかけはさまざまだが、一つ言い切れることは「保護者や本人が原因ではない」ということ。環境への不適応は誰にでも起こりうる現象で、「大人も仕事が合わなくなったら転職するように、子どもの義務教育も個人に合わせて環境を選べたら」と3者とも話している。

※文部科学省 初等中等教育局「いじめの状況及び文部科学省の取組について」(令和4年11月24日)

 「フリースクールに来る子どもの中で特に大変なケースが、心が折れてしまった子です」とクラスジャパン小中学園の小幡和輝さんは語る。保護者が何とか学校に行ってもらうように試行錯誤することで子どもの心的負担が積み重なり、精神的な不調を起こすことも多い。その状態で青年期を過ごすと、その期間だけ同級生との差が開き、社会的自立が遅れる、もしくは自立できなくなることも大いにある。それよりは健やかに過ごせる環境で必要な教育を受ける方が将来につながるだろう。

 ICTやインターネット活用が進み、自宅で勉強できる環境は昔と比べて格段に整った。ただ、学習の課題は解決しても、保護者としては「学校に行かないことで社会性や人間関係が育たないのでは」という心配がぬぐえない。

 学校以外の社会性を育む場所として「フリースクール」という選択肢がある。「卒業後、社会に出てもつまづかないように、コミュニケーションの取り方や時間感覚をそれぞれのペースで育てています」とフリースクールいずみの東田華奈さんは語る。

 また、「オンライン」という選択肢も。先んじて通信制フリースクールとしてクラスジャパン小中学園を確立した小幡さんは「インターネットがこれだけ普及している現代においてはオンライン上のコミュニケーションが主流になりつつあります。そもそも対面のコミュニケーションだけでなく、ビデオ通話やテキストでの対話のスキルを育むことも大事ではないでしょうか」と語る。

 低年齢の不登校児を抱える保護者は、子どもと過ごす時間が長くなるという物理的な負担だけでなく、金銭的な負担も大きい。フリースクールは認可外なので通学に費用が発生する。国や自治体が設ける子ども関連予算のうち不登校児童に割かれる割合は、不登校児童の実際数に対して少ないという課題も見受けられる。

 そして進学の問題。フリースクールは、在籍する学校と提携し単位認定を行うことで出席扱いにするという制度がある。ただ、認定するかどうかは各学校の裁量に任されている。フリースクールに入る前に学校との相談が必要だ。

 まだまだ課題は多いが、ひと昔前と比べて教育の選択肢が広がったことは確かだろう。これから、より「不登校」児童へのネガティブな印象が払しょくされ、教育の選択肢がもっと多様になることを願う。

取材協力団体

 不登校でも出席扱いを目指せるオンラインフリースクール。文科省の通知に沿って学校と連携し、在宅学習のサポートを行う。ネットの先生が担任として伴走し、子どもは自分のペースで勉強できる。eスポーツやイラストなどの部活動やオンライン上のホームルームを通じて、得意を伸ばしたり生徒同士の人間関係も育める。

 北区天満に拠点を置く小学4年~中学3年生対象のフリースクール。週1~4日まで通学頻度を選べ、利用者の在籍する小中学校と連携し、在籍校の出席認定を目指すことができる。同施設に通う通信制高校の生徒と合同での授業や課外活動など、他学年との交流が特徴。

 日本で唯一の不登校専門紙で、不登校に関する情報提供と不登校の子どもを抱える保護者のコミュニティー作りを行っている。不登校・ひきこもり本人の声が充実しているのが特徴。1000人以上の不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場している。

 民間運営がほとんどのフリースクールだが、2020年から大阪市の「教育支援センター」が設置され、現在は花園、新大阪、桃谷の3カ所で運営されている。利用対象は大阪市立の学校に通う児童生徒で、通所頻度や時間は自由。自学自習できることが条件で、自分のペースで学習を進めながら生活リズムを整えることができる。