開業から半年で不動産価値が劇的に向上
昨年9月の先行まちびらきから半年を迎えた、うめきた2期区域「グラングリーン大阪」。今月21日には商業施設やホテルなどからなる南館がオープンし、さらに魅力を増している。「大都市の駅前を緑化する」という前例のない再開発は、街にどのような影響をもたらしたのか。その不動産価値について取材した。

ビルではなく公園を作る
「緑豊かな公園を作ったことで不動産の価値が劇的に上がった。今後の都市開発において、東京や世界にも誇れる新たなモデルを示せたことは大きい」と語るのは、三菱地所の神林祐一グラングリーン大阪室長。うめきた公園の指定管理者・一般社団法人うめきたMMOの事務局長も務める、グラングリーン大阪開発の「仕掛け人」だ。
グラングリーン大阪の最大の特徴は、約4万5000平方㍍の巨大な都市公園を整備したこと。再開発エリアの約半分を緑化するという計画自体が珍しいのに加え、それが郊外ではなく、JR大阪駅前の一等地に誕生したことが大きなインパクトを与えた。米有力紙ニューヨーク・タイムズが「2025年に行くべき52カ所」に大阪市を選び、同公園を「先進的な都市の新たな緑地を楽しむことができる」と高く評価したことも記憶に新しい。
公園がイノベーションの拠点に
「グラングリーンの効果を数字として実感できるのは、南街区のオフィスエリア。我々の想定以上に誘致が進み、オフィスの入居率は85%と好調に推移している」と神林室長は胸を張る。クボタや塩野義製薬が本社移転を決め、ホンダのソフトウエア開発拠点や富士通の大阪拠点も開設する。彼らの共通目的として、「優秀な人材の獲得」「ウェルビーイングな環境の整備」「イノベーションの創出」が挙げられるという。「コロナ禍を経て、オフィス回帰の動きが強まる中で、従業員が働きやすい環境を作ることが企業の重要な経営判断になっている。単にオフィスが駅近にあるというだけではなく、公園を庭のように使え、そこで生まれる出会いがイノベーションにつながることを期待されている」と神林室長は分析する。

高騰するマンション価格
グラングリーン大阪の開業はマンション価格にも影響を与えた。エリア内で建設が進むタワーマンション「グラングリーン大阪 ザ・ノースレジデンス」(地上46階建て、総戸数484戸)の住戸が関西最高額となる25億円で販売され、大きな話題を呼んだ。第1期と第2期を合わせた平均倍率は約19倍、最高倍率は95倍という、高倍率での抽選販売になった。
市内のタワーマンション売買において1位の実績を誇る「TOWERZ」の運営会社・ES&Companyの芝崎健一COO(最高執行責任者)は、「ノースレジデンスの平均坪単価は950万円だったが、まだまだ割安だと判断されたから抽選の申し込みが殺到した。今年販売が予定されているサウスレジデンスは、坪単価1200~1500万円程度になるのではないか」と予想する。

「おでかけする街」から「住む街」へ
周辺の中古マンションも値上がりが続いている。表にまとめたのは、グラングリーン大阪1㌔圏内に位置するタワーマンションの価格推移だが、坪単価が前年比120~141%と大きく上昇している。ちなみに22~23年は98~125%アップにとどまっており、グラングリーン大阪の開業に合わせて価格が吊り上がっていることがよく分かる。


「おでかけする街」だった梅田が、ここ数年の開発によって「住む街」に変貌を遂げた。リクルートが発表する「SUUMO住みたい街ランキング関西版」で、梅田は4年連続のトップに選ばれている。
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芝崎さんは「グラングリーン大阪を中心とした梅田徒歩圏のマンションは、これからも資産価値の上昇が期待できる。中津、福島あたりは利便性も抜群で、住みよい街になっている」と解説する。
うめきた公園の利用者を観察していると、ベビーカーを押したファミリーや若い女性グループが多い。「場所柄、ビジネスパーソンが中心になると考えていたので、良い意味で意外だった」と神林室長。「この公園を大阪の方に受け入れてもらえたことが事業者として素直にうれしい。不動産の価値向上についても、こんなに短期間で効果が表れたことに驚いている。これからも市民の皆さんと一緒にグラングリーン大阪を育てていきたい」と神林室長は話している。