先月閉幕した万博会場に出展していたモナコパビリオンにミツバチの生態などを紹介するボード「ミツバチ保護モニュメント」が設置されていたが、そのボードが補修などを経て、大阪市北区中津にあるCafé & Grocery「B HONEY」へ移設され、11月12日から店内で公開されている。

Café & Grocery「B HONEY」は店名が示すようにハチミツを使用した商品や料理などを提供する店舗だが、その運営会社である「名畑」は、ミツバチの生育環境保護にも協力していて、同社のSDGs活動の一環として支援しているNPO法人梅田ミツバチプロジェクトという都市型養蜂の取り組みとも深く関係している。

同プロジェクトは、都市養蜂による都市緑化や地域環境の活性化を目的に活動しており、「B HONEY」ではこのNPOが採蜜する茶屋町産ハチミツ主役としたスイーツやドリンクを提供しているという背景がある。
実際、店舗の入り口近くには梅田ミツバチプロジェクトで採取されたハチミツを販売している。


万博開催中に「B HONEY」も宴館で1カ月だけ期間限定で出展していたり、「名畑」がモナコパビリオンと商取引で接点があったこと、またNPO法人梅田ミツバチプロジェクトの理事長がウーマンズパビリオンで開催された「都市養蜂で自然豊かな街に」というイベントでセミナーを行ったり、といくつもの要素が繋がっていったことで、最終的に「B HONEY」へ「ミツバチ保護モニュメント」が寄贈され、移設されることになったそうだ。

万博でできた縁が国境を超えて人をつなぎ、それぞれが独自に行っていたミツバチを守ろうとする活動が共鳴した結果がこの移設に集約されたのだ。これこそ万博のレガシーの1つなのかもしれない。

万博会場へ行った人は実際にモナコパビリオンで見たことがあるかもしれないが、移設されたモニュメント自体は、モナコパビリオン内の一番奥の位置に展示されていたもので、「ミツバチに花を」をテーマに、ミツバチ保護や生物多様性の大切さを来場者に伝える目的で制作された。


モナコ公国は、世界で2番目に小さな国で国土が狭い上に超近代化した都市国家なので、国内に自然が少なくその保護が急務となっている。同時に近隣に目を向けると国境を接するフランス領土内にはアルプス山脈がすぐ背後にあり、養蜂が盛んな地域が近くにあるなど、ミツバチの存在価値を理解しやすい状況にもあった。
また今回の万博でも海洋保護を全面的に訴えるような展示内容で、世界の海の保護活動を支援していたりと、モナコは環境保護に積極的な国として知られている。その中で国内では都市養蜂の推進や有機栽培植物からの採蜜を通じ、生態系保全に取り組む活動を行っている。
万博会期中には、モナコ以外にもイタリアパビリオンの屋上ガーデンに置かれたミツバチの巣箱や、ウーマンズパビリオンでのセミナーなど、養蜂に関する取り組みが何度か紹介されてきた。また、大阪市内での都市型養蜂についても報じられるなど、養蜂活動自体が増加している。近年、ミツバチの生育環境を守る重要性への関心が高まる中、「B HONEY」を訪れる客の中から少しでもミツバチに興味を持つ人が増えることが期待されている。





半年間雨風にさらされていたので痛んでしまった部分を補修し、パーツの入れ替えや補強を行い、オリジナルの姿から少し高さが低くなっているが、「ミツバチ保護モニュメント」の店内に設置されたその姿は、周りを圧倒する様でもあり、元々の内装デザインとの親和性の高さからか違和感を全く感じさせない存在感は不思議な感覚だった。

展示は実際に触れたり、近くで説明文を読んでミツバチの生態を学ぶこともできる。店舗は、一人でも多くの来店客にミツバチの大切さを知ってもらいたいとしている。
営業時間は、平日が午前11時から午後8時、土曜は午前9時から午後8時まで。
■Café & Grocery「B HONEY」/大阪市北区豊崎3丁目20-20
(文・写真=岡野健将)


