【外から見たニッポン】だんまりハリス VS おしゃべりトランプ

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 米ニューヨーク州立大ビンガムトン校卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」「情熱大陸」「ブロードキャスター」「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、ディスカバリーチャンネルやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 カマラ・ハリスが民主党の正式な大統領候補になり、しばらく経ちますが、彼女がメディア取材に応じたのはCNNインタビューの一度きり。隣に副大統領候補のティム・ウォルズを従えてでした。

 それがなぜ問題なのか?実は米大統領選は各党の候補を決めるため1年半近くをかけ、候補者が自分の政策や信条、経歴や実績を国民に訴え選挙を戦います。しかし、ハリスは棚ぼた式に急に祭り上げられたので、そういう機会は全くなかった。おまけに副大統領とはいえ、認知度は低く、政策や信条はほとんど知られていません。

 つまり、ハリスはこれまでのどの大統領候補より積極的にメディアに出て売り込まないといけない立場にある。にも関わらず、取材を避け、選挙集会でスピーチはこなすが質疑応答は受けないスタンスでいます。

 取材を受けない彼女に、米国内では相当に非難の声が上がっています。政策や信条を説明できないから受けられない、という声も。

 確かに集会での発言やCNNのインタビューを見ても、何が言いたいのかよくわからないし、思いつきで政策を語っていると思うほど、内容の薄い発言が目立ちます。ハリスの支持者でさえ、理解している人は少ないのでは。

 民主党支持者ですら「彼女はインタビューを無難にこなした」と言うものの、ポイントを稼げる内容でなかったことを認めています。

 一方のドナルド・トランプ共和党候補は、連日のメディア取材に気軽に応じ、選挙集会でも見事な話術を披露しています。内容は決して褒められるものではなく、不正確な情報も含まれますが、自信満々に言い切ったり、わかりやすく説明したり、百戦錬磨のビジネスマンの経験が生きているようです。

 しかし、AIを使った偽情報に振り回されたり、SNSで誤報を発したりと問題も抱えています。おまけに急接近したイーロン・マスクを政府の財政の無駄をチェックする組織の代表に据えると言い出したりしています。

 どっちもどっちの状況ですが、ハリスの勢いは当初ほどない。全体はまだリードしていますが、個別ではトランプがかなり優位です。

 国民の3割以上が最重要視する経済政策はトランプが圧倒的に優勢。続く移民問題や安全保障もトランプリードの結果が出ています。

 「トランプが大統領になれば、今度こそ民主主義を破壊する」と言われるのに、個別の政策や実行力を見るとハリス支持を上回っているのが米国の現状なのです。

 9月10日に両候補の討論会が初めて開かれますが、ハリスはみんなが納得いく説明を確実にしないといけません。自分の意見を押し通したり、人の話をねじ曲げたりすることにかけてトランプは圧倒的に上手い。ハリスがトランプの問題点をどう攻めても、彼はきっと簡単にあしらうはず。ハリスはここで失敗すると、残りの選挙期間を虚しく過ごすことになります。それを知ってかトランプは「ハリスに話をさせてやる」と不適な笑みを浮かべています。

 みなさんがこれを読んでいるころは、討論会の結果が出ているはずです。

 最後に余談を一つ。〝米大統領選のノストラダムス〟と呼ばれるアメリカン大学の歴史学教授のアラン・リクトマン氏は、過去10回の大統領選の結果を9回的中させています。そのリクトマン氏は今選挙はハリスが勝つと予想。果たしてノストラダムスの予言は的中するのでしょうか。