Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

5月24日にトランプ大統領が日本製鉄のUSスチール買収を承認したというニュースが流れました。私は彼が大統領に就任した頃に、「そのうち承認する」とコメントしましたが、その通りになりました。本当にわかりやすい人物です。
とはいえ、関税や不法移民の強制退去など、公約通りのこと以外では想像をはるかに超える「とんでも政策」を次々と実行しています。この影響で、経済への悪影響や社会不安が高まるなど、株価も暴落し、多くの米国民が先行きの不安を抱える状況に陥っています。
そんな中、トランプ大統領が提案する減税案が議会下院を通過しました。「Big Beautiful Bill(大きく美しい法案)」と名付けられた法案で、下院で215票対214票の接戦で可決され、上院での審議に移ります。問題点や疑問点も多い法案ですが、ポジティブな面もあります。
例えば、企業の投資や研究開発費に対し、その年に全額即時償却を認めたり、中小企業の償却費の限度額の増額、事業所得控除の恒久化と拡大、利子控除の拡大、地方や困窮地域への投資への優遇拡大などが盛り込まれています。これらが実行されると、積極的な大規模投資を企業に促したり、技術革新が生まれやすい土壌が強化されます。
また、個人向けには今年の1月1日から2029年1月1日までに米国で生まれた新生児には、自動的に連邦政府が口座を用意。そこに1000㌦(約14万円)を振り込むというもので〝トランプ口座(Trump Accounts)〟と名付けられています。親はその口座に年間で最大5000㌦を入金できるので、その口座でインデックスに連動する投資をすれば、子どもは生まれた時からずっと複利を生かした投資で資産を増やしていけると説明しています。
この法案が上院でも可決されたら、米国の企業投資は増加し、より多くの技術革新が生まれることは間違いないでしょう。果たして日本の企業は対抗していけるのか、が気になるところです。
日本でもトランプ口座のようなことをすれば、少子化対策と投資促進を一気に推し進められそうな気がしますが、またいつものように「財源はどうする?」「現金を配るのはどうかと思う」という意見に潰されるのでしょう。
そのような声を抑えつけてでも、何かをやり遂げようとする政治家は日本にはいなさそうなので、その点ではトランプ大統領のような実行力のある政治家の存在に、うらやましさを感じます。