能登半島地震 被災地視察ルポ② 南海トラフ地震への備えは 液状化、建物の耐久力不足、災害対策… 

 前回は能登半島地震について、金沢市、七尾市中心部、七尾市能登島の各地の様子をお伝えした。今回は、被害がひどかったエリア、建物にはどのような要因があるのか。今後起こりうる南海トラフ地震にどのような対策をするべきか解説する。

倒壊した建物の多くが築年数が古い木造建築だった
倒壊した建物の多くが築年数が古い木造建築だった

共振や液状化など地理的な要因

 被害について、大きく2つに分けて見ていくことにする。1つ目は地理的要因によるもの。地震対策本部によると、能登地方の地殻内では2020年12月から地震活動が活発になっており、21年7月頃さらに活発化。今回、一連の活動において最大震度7を観測した。また、木造住宅の揺れを増幅させる共振と呼ばれる現象が発生。甚大な被害をもたらした。この共振現象はキラーパルスとも呼ばれ、阪神淡路大震災や熊本地震などでも観測されているという。

 海岸や湖沼の埋め立て地、河川敷、川沿いなどの砂質の地盤で液状化現象が起きた。今までかみ合っていた砂粒に強い揺れが加わることで動くことにより、水が噴き出したり、その上に立っていた建物が沈んだり、傾いたりするほか、マンホールが浮かんでくるなどの現象も発生した。

地盤のイメージ

倒壊した建物の多くが耐久力不足

 2つ目は、建物の構造耐力不足だ。倒壊した建物の多くが、築年数が古い木造建築物だった。筋交いが無かったり、シロアリによる食害で柱がスカスカになっていたりする状況が見て取れた。
 七尾市の建設会社アントール、川上孝一社長は「液状化被害に遭った建物を除いて、新耐震の建物ではほとんど無被害に等しく倒壊の原因は耐震不足に尽きると思う」と話す。国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)、国立研究開発法人 建築研究所(同)は「令和6年能登半島地震による木造建築物の被害調査報告」で、建築年代が古い木造建築物が倒壊または大破していたと発表している。

棚が倒れ、割れた食器が散乱した能登島の自宅
棚が倒れ、割れた食器が散乱した能登島の自宅

災害時の一番の困りごとは「水」

 近い将来起こり得る地震にどのように備えたら良いのか。
 防災科学技術研究所(同)が運営するWEBサイト「地震ハザード防災ステーションJ─SHIS」では、地図、住所から地震のリスク予測などを調べることができる。また、ハザードマップで、自宅や職場周辺などの危険性や避難場所を確認しておくことが、もしものときの一助となる。
 被災地を取材する中で、被災者が異口同音に「一番困った」と答えたのは「水」だった。「下水のマンホールを開けてそこで用を足す時期もあった」と前述の川上社長。七尾市・能登島に位置するのとじまの不動産会社(七尾市)河尻成美社長は「能登島は3月20日ごろまで断水していたため、井戸水を活用して生活していた。井戸水は災害時に役立つと身にしみて感じる」と話す。
 水のほか、保存食や発電機、寝袋、仮設トイレなどを準備しておくことが災害時の備えとなる。ついおろそかになる対策だが、「地震が起きてから」「災害が発生してから」では事すでに遅し。迫りくる地震に向けて対策していただきたい。