最大震度7を観測した能登半島地震で、水道管被害がクローズアップされている。高度成長期に整備された老朽水道管を抱える大阪市は2024年度から、全国初のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で水道管の耐震化を実施する。更新(耐震化)期間の短縮に加え、事業費削減が見込まれ、南海トラフ巨大地震などによる広域断水の回避も期待される。
ライフライン水道管を守れ
PFI方式導入 耐震化期間の短縮、コスト削減効果も
市民生活を直撃
能登半島地震では水道管が広範囲に壊れ、石川県を中心に最大約13・7万戸で断水が発生した。道路が寸断された影響などで復旧が遅れ、なお断水が続いている。また、1995年の阪神・淡路大震災でも約126万戸が断水し、日々の市民生活に大きな影響がでた。
40年超えの水道管
大阪市の水道事業は1895年創設、国内で4番目の近代水道としてスタート。度重なる市域の拡大や、戦後から高度経済成長期にかけて人口が急増するなど、他都市に比べて早くから都市化が進んだ。1970年ごろには全管路網の約9割が整備され、これまで6次にわたる配水管整備事業を通じて着実に水道管の更新を進めてきたが、現時点では法的耐用年数(40年)を超過した管が他の大都市と比較しても多い状況となっている。
ただ、大阪市水道局によると、「法定耐用年数は水道管自体の寿命を定めたものでない。大阪市の水道管の約8割を占めるダクタイル鋳鉄管は、水道局による調査・分析の結果から、埋設されている土壌によって、概ね65から100年の使用が可能であることを確認している」という。
法定耐用年数超過管路率(2016年度末の大都市)
2031年までに基幹水道管の耐震化
国は水道管の耐震化で60%以上を目指しているが、関西2府4県では大阪府が49・9%(2021年度)でトップだ。 大阪市が国内で初めて導入したPFI方式は、民間事業者の技術力と創意工夫で工事の品質確保とコストを抑制しつつ耐震化のぺースアップを図り、「事業期間終了時の2031年度末には、南海巨大地震の発生時における広域断水の回避に一定のめどを付ける」「上町断層帯地震発生に備え、基幹管路の耐震化を効果的・効率的に推進する」を目的に実施する。
大阪市がPFI事業契約したのは、大林組グループが設立した特別目的会社、ウォーターパートナー大阪管路。
PFI方式の対象は38㌔㍍で98区間の工事を民間が主導する。31年までの8年間の事業期間で域内の主要な基幹管路すべての耐震化が完了する見込みという。
一括発注による作業の効率化、さらに行政の効率化で期間は5年程度短縮されるほか、約7・19%の事業削減効果もあるという。
大阪市水道局総務部連携推進課の担当者は「当初の事業費削減効果は約3・82%だったが、さらに削減効果を見込んでいます」と話している。
南海トラフや上町断層帯地震発生が指摘されている大阪。少子高齢化が進む中、自治体と民間が連携しながらスピード感ある広域断水の整備が期待されている。