元日に発生した能登半島地震。震源地に近い輪島や珠洲以外の地域では、どのような被害が発生したのか。発生から1カ月が経った2月9日、石川県金沢市、七尾市を取材した。
温水器から水漏れ発生
石川県の県庁所在地、金沢市内では、震度5弱・5強を観測。被害の大きかったエリアとそうではないエリアに差が見られた。
傾斜地の田上(たがみ)新町では、土砂崩れにより住宅4棟が崩れ落ちた。
傾斜地以外でも揺れによる被害や液状化の現象も各地で起きている。県内でアパマンショップを手掛けるクラスコ(金沢市)小村典弘社長は「市内でも比較的新しい街の道路がひび割れたり、でこぼこしたりしている」と話す。テレビでもしばしば放送されている金沢市近郊の内灘町ほど深刻な被害が出ているわけではないが、道路の隆起や亀裂があちこちで見られた。これらが揺れで発生したのか、液状化によるものか、実態把握はできていない。
金沢市の土木課の担当者は「道路において大きな被害があったのは市内で1、2カ所だった。ただ全容についてはまだ把握できる状況にない」という。
取材を進める中、不動産会社や建設会社が口をそろえて数が多かったと語った被害は「電気温水器からの水漏れ」だ。電気温水器が転倒したり、配管に亀裂が生じたことにより、建物が水浸しになった住宅が多数あったという。
築古の木造住宅 相次いで倒壊
ピタットハウス金沢駅西店を運営する志乃丘商事(小松市)篠岡沁一郎社長は「元栓を閉めると給水が停止できるが、知らない住民が多いのでマンション中が水浸しになった。元日から数日かけて水はけを行った」と話す。
能登半島中央部に位置する七尾市では、古い木造の住宅の倒壊や、地割れ、液状化などが見られた。さらに、浄化槽の浮き上がりにより下水の復旧に時間を要したという。七尾市中心部では、水道が開通したのが、取材の2日前(2月7日)で、それまでは井戸水を使用していたという。
同市での被害について、地元の建設会社アントール(七尾市)川上孝一社長は「耐震補強をしていない、いわゆる築古の木造建物が相次いで倒壊した。一方、液状化現象で傾いた建物は地質が大きく関係している」と話す。
能登島では島民の主要道路、陥没
七尾湾に浮かぶ能登島では、現在も断水が続き、島民がたちまち利用していた主要道路が陥没。今もなお、農道を使用している。能登島でも被害の大きかった地域とそうではない地域があり、はっきり分からないが、津波が150㌢に達したエリアもあるという。
能登島の不動産屋(七尾市)を経営する河尻成美社長は主要道路を走行中に地震が起きた。「陥没地点の200~300㍍手前を走っていた。もう少し走っていたらと思うとぞっとする」と振り返る。自宅に戻ると、食器棚やタンスの転倒や2階部分の天井が落下し、建物全体も傾いており、住める状態ではなくなった。
一方、隣接する事務所には、津波が到達。「発生当時は運転中で事務所にいなかったため、詳細は分からないが、外壁の津波高の痕跡やブイや網などの漂流物から波が押し寄せたことが分かった」(河尻社長)。このほか、地面の亀裂や壁の喪失などさまざな問題を抱えるが、再起する予定だそうだ。
能登島の集落を見て回ると、瓦屋根の建物が相次いで倒壊しているエリアもあれば、ほとんど倒壊していないエリアもあった。
今回は金沢市、七尾市中心部、七尾市能登島の各地についてルポルタージュ形式でお伝えした。
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次回は、被害についてどのような要因があるのか、今後起こりうる南海トラフ地震にどう備えるべきかについて解説する。