「スマホやEVだけじゃない」世界を動かす半導体市場をプチ解剖
日米ともに株価が好調だ。要因の一部に半導体銘柄が牽引しているというニュースが多い。これまでも産業のコメと呼ばれた「半導体」。今年の世界半導体市場は過去最高の約87兆円になると予測される。
コロナ禍の半導体不足から始まり、米中対立などの地政学リスクを発端に半導体への投資が国家の覇権競争に発展。最近のブームは、ChatGPTなどテキストや画像などさまざまコンテンツを学習して生成できるAIが注目を集めている。
今さら聞けない 半導体って何?
スマートフォンやパソコンをはじめ、家電製品や自動車、信号機、クレジットカードのICチップと、今の生活の中に半導体はあふれている。とても小さく製品の中にあるものなので、普段目にすることがないのでなかなかイメージしにくい。
そもそも半導体とは何なのか。小学生にもわかるように解説してみる。一言でいうと、スイッチの代わりに電気を使ってオンとオフの状態を作り出せるものだ。この性質を「0」と「1」に当てはめることで計算をすることができる。ネットで調べると、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の〝中間の性質〟を持つ物質を半導体という。
また、「絶縁体」のおかげで電気を貯めることができて「記憶」することができる。一時的な記憶を行う「DRAM」、長期的な記憶の「NANDフラッシュメモリー」がある。一時的な記憶も繰り返し覚えることでより大量に長期間記憶できるので人間の脳のように例えられる。
日経平均への影響力の強さだと、東京エレクトロン、アドバンテスト、信越化学などが挙げられるが、日経平均の構成銘柄で半導体に関わっている企業は意外と多い。例えば、日本のお茶の間の必需品「味の素」が作る絶縁材(ABF)は半導体に使われており、全世界の主要なパソコンに搭載されている。
1社ですべて作れない半導体
現在の生活になくてはならない半導体は製造工程が複雑で1社がすべてを作ることができない。一言で半導体といっても設計(ファブレス=工場がないという意)、製造に特化したファウンドリ(前工程という)、組み立てや試験を専門にするオーサット(後工程)と分業されている。これらは総じて「半導体メーカー」といわれ、このほかにも半導体を作る装置を供給するメーカー、素材や部品メーカー、これらの企業間で卸売業をする半導体商社がある。
また、役割も多岐にわたる。データを保存する「メモリ半導体」、計算の「ロジック半導体」、自動車などの電力を供給・制御する「パワー半導体」、光を電気信号に変換する「イメージセンター」がある。
政府が誘致した熊本県で建設中の台湾の半導体メーカー「TSMC(台湾セミコンダクタ―)」は世界最大のファウンドリだ。iPhoneを販売するアップルのチップの製造を請け負っていることで有名だ。
過去、日本が世界の半導体を牽引する位置にあったが、現在では米国、韓国、台湾にその座を奪われている。理由は半導体の用途の変化だ。日本が得意だった大きな業務用コンピューターから小さなスマホへと半導体が微細化する進化、対応に遅れたのだ。
今月22日は、話題の生成AIの中心企業といえる米国半導体大手「エヌビディア」(ファブレス)の決算を控える。今や日米の株価指標すら牽引する半導体の中心企業の決算に多くの市場関係者が固唾をのんでいる。