
大阪・関西万博の米国ナショナルデー式典が19日、会場内のレイガーデンで行われ、米国のスコット・ベッセント財務長官と日本の赤澤亮正経済再生担当相が出席した。ベッセント氏とはどんな人物なのか? 金融市場の行方を知る上でも重要な同氏を紹介する。
ベッセント氏はトランプ政権で経済政策の中枢を担う人物で、日米の関税協議のキーマンでもある。金融市場では「朝令暮改」とも評されるトランプ大統領の発言よりも、ベッセント氏の安定したメッセージに信頼を寄せる声も多い。
同氏はウォール街出身の元ヘッジファンド・マネジャーで、かつてジョージ・ソロス氏のファンドで最高投資責任者(CIO)を務めた。地政学リスクや中央銀行政策に敏感に反応しながらポジションを取るグローバル・マクロ戦略で知られる。
近年では、アベノミクスを彷彿とさせる独自の「3−3−3政策」を掲げ、①財政赤字をGDP比3%に削減、②規制緩和による年率3%成長、③日量300万バレルの原油・エネルギー生産を目指すと明言。財政健全化と経済成長の両立を図る姿勢を示している。
4月の相互関税発動後のトリプル安局面では、「ベッセントがいるのに、こんな無責任な書簡が出されるのか」という落胆ムードになったが、関税措置90日間延期を主導し、市場を落ち着かせた。中国との交渉でもトランプ氏から「スコットに任せる」との言葉を引き出し、高関税の応酬から緊張緩和にかじを切った。
5月には米国債格下げに対し「ムーディーズは信用していない」と一蹴。長期金利上昇局面では「ベッセント・プット」と呼ばれる発言効果で金利を押し下げた。
7月4日、トランプ大統領肝いりの大型減税と歳出削減が骨子の「1つの大きく美しい法案」でも、調整役としても手腕を発揮。一方で米議会予算局(CBO)は、法案により今後10年間の財政赤字が累計24兆ドルを超えると警鐘を鳴らすが、ベッセント氏は「年3%成長が実現すれば十分に吸収可能」との立場を貫く。
また、この法案には、債務上限の引き上げが盛り込まれた。これにより、向こう数年間に渡り、市場は債務上限問題による議会の無駄な駆け引きを目にする必要がなくなった。財務省の資金が枯渇する「Xデー」の存在があったが、短期的には消滅した。
今後も米財政と金融市場の間で「調整役」として重責を担うことは間違いない。トランプ政権の乱気流の中にあって、市場の〝盾〟として、とりわけ金融市場からの信頼が厚いようだ。


