夢を形に 子どもたちが創る〝小さな万博〟

来場を呼びかけるこどもスタッフたち=10月10日、大阪・関西万博

子どもたちの挑戦が万博で咲いた2日間

 今年10月13日に閉幕した「大阪・関西万博」。世界中の注目を集めた会場の一角で、未来へ続く〝小さな万博〟が開かれていた。10・11日にEXPOメッセ「WASSE」で行われた「こども万博」だ。

 全国25社の企業・団体が連携し、子どもたちに多彩な体験プログラムを提供した。会場では、メタバース空間で学ぶ消防士体験や整備士、心理カウンセラー、鉄筋職人などの職業体験のほか、ステージイベントや縁日なども展開された。

職業体験の様子=10月10日、大阪・関西万博
職業体験の様子=10月10日、大阪・関西万博

プラカード手に客を呼び込むのは小学生

 来場した子どもたちの笑顔のために全力を尽くしたのは、大人だけではない。小学校1年生から6年生までの「こどもスタッフ」も、お客さんの呼び込みや縁日ブースの手伝いに奔走していた。

 「こども万博やってまーす!」と、会場の外で大きな声を響かせる子どもたち。兵庫県出身の小学4年生・「ちの」さんもその一人だ。近所で行われていた「こども万博実行委員会」による活動に参加したのをきっかけに、1年半前から活動を続けているという。

 「前は自分に自信がなかったけど、続けるうちに積極的になれてきた」と話す「ちの」さん。父親も「声が前より出るようになり、自分から動くようになった」と成長を感じている。「活動は楽しい。今回の万博ではスピーチも担当する。緊張するけど頑張りたいです」と、「ちの」さんは笑顔で意気込んだ。

子どもたちの夢が5万人を動員

 「こども万博」は、本物の万博会場での開催は初めてながら、これまで全国7会場で延べ約5万人を動員した人気イベントだ。そもそもの開催のきっかけについて、実行委員長の手塚麻里さんはこう振り返る。

イベント開幕の「朝の会」で挨拶する実行委員長の手塚麻里さん=10月10日、大阪・関西万博

 「私自身が3児の母。2022年のコロナ禍の中、何気なく子どもたちやその友だちに夢は何かと聞いたら、『言っても叶わない』『考えてない』という声ばかりで驚きました。それなら、なんでもいいから夢を出してみようと始めたところ、小学生らしい夢が128個集まりました。人間くらい大きなスライムを作るとか、家中に養生して落書きするなど、どれも子どもらしい夢です。叶うと、もっと挑戦したくなるんです。『近所のお菓子屋さんのレシピを知って作ってみたい』といった夢も出てきて、私ひとりでは手に負えなくなり、お店や企業に協力をお願いするようになりました。そのつながりの中で、『こども万博』というイベントとして形になったんです」

 今回、万博会場での開催に至った経緯についても、手塚さんは語る。

 「〝万博〟と名のつくイベントをしているからには、大阪万博にもみんなで行きたいねと話していました。すると子どもたちから『私たちも出られへんの?』という声が上がって。民間団体として申請したところ、採択されたんです。すべては子どもたちが主体的に考え、積極的に取り組んできた結果です」。

 大人の支援のもと、子どもたちが社会の主役として立った「こども万博」。「来年は海外での開催も決まっています」と手塚さん。子どもたちのさらなる活躍に期待が高まる。

職業体験の様子=10月10日、大阪・関西万博

(文・写真=西山美沙希)

タイトルとURLをコピーしました