
大阪市淀川区に本社を構えるミライロは、障害者支援のデジタル化を進めている。従来の紙の障害者手帳は自治体ごとに体裁が異なり、全国で292種類に及ぶ(同社調べ)。これをデジタル化し、どこでも画一的に使えるようにしたのが、同社が開発したデジタル障害者手帳アプリ「ミライロID」だ。まさに〝障害者のプラットフォーム〟をつくる企業として注目が集まっており、ことし3月に東京証券取引所グロース市場に上場したばかりである。
同社は、垣内俊哉社長と民野剛郎副社長が大学在学中に創業した。垣内氏自身が障害のある当事者であり、社員の約15%を障害者やLGBTQ+などの当事者が占めるなど、社内にも多様性を生かす環境が整う。
障害者を含む多様な人にとってバリアと感じるものは、価値に変換することができるという考えのもと、理念〝バリアバリュー〟を掲げ、当事者視点だけでなくビジネスとして持続可能な最適解を提示するソリューションを展開する。同社は、障害者が社会で直面する「環境・意識・情報」の3つの課題に着目。
主力サービスである「ミライロID」は、従来の紙の手帳提示に伴う心理的ハードルや不正利用の懸念を解消し、スマートフォンで簡単に提示できるようにした。自治体ごとに異なっていた手帳仕様がデジタルで統一され、利便性は大きく向上した。ユーザーはアプリ上で証明でき、クーポン受け取りなどの機能も整う。

アプリは2019年に開始。当初は6事業者のみの参画だったが、自治体のマイナポータルと連携したことでJR各社も導入し、利用範囲が急速に広がった。現在では4000以上の事業者が参加し、ユーザー数は月1万人のペースで増加。累計は55万人を超えたという。大阪メトロや阪急電鉄など関西圏での利用も多く、全体の24・5%にあたる約10万人が関西圏のユーザーとなっている。
同社は、研修・検定事業「ユニバーサルマナー検定」も展開する。障害のある当事者が講師を務め、対人接遇やコミュニケーションの基本を学ぶ内容で、受講者はすでに30万人を超える。本検定は単なる知識習得だけでなく、行動変容を促すプログラムとなっており、住友林業やヤマト運輸(約6万人のドライバーが受講)など、様々な企業や自治体で導入されている。

このほかにも、国内の手話通訳者は約4,000人と限られている現状から、オンラインでの手話通訳サービス「ミライロ・コネクトオンライン手話通訳サービス」を提供する。「デフリンピック」の開催に向けては、ファミリーマートの48店舗で、QRコードを読み込むことで手話通訳対応が可能なシステムを導入している。
ビジネスモデルとしては、ユーザーは無料で利用できる一方、マネタイズ戦略が重要なポイントだ。通常、障害者手帳での割引がないコンビニエンスストアや飲食店などに有料でクーポンを掲載してもらい、マーケティングの観点から収益化を図ってもらう。また、システム連携も収益源となっており、例えば駐車場精算機との連携では、アプリをかざすだけで自動的に割引が適用される仕組みを提供。現在、200カ所以上に導入されており、全国の自治体に広がれば収益が増加するモデルだ。
民野剛郎副社長は「障害のある方々とその家族が今日を楽しみ、〝明日に期待ができる〟世界の実現を目指している」と意気込む。
■MIRAIRO(ミライロ) 証券コード335A
(大阪本社)大阪市淀川区西中島3-8-15-8F
(東京支社)東京都品川区東五反田5-26-5-5F
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