大阪市、喫煙所不足が浮き彫り 市商連「837カ所必要」と試算 たばこ税活用求める声も

 大阪市内で喫煙所の不足が深刻化している。2025年1月に改正された「大阪市路上喫煙の防止に関する条例」により、市内全域で路上喫煙が禁止されたが、喫煙所の整備は追いつかず、市民や観光客からの不満が高まっている。

 市の中間報告によると、市内の喫煙所は現在383カ所設置されている。しかし、そのうち半数近くはパチンコ店や飲食店など利用者が限定される施設内にあり、誰もが利用できる公的な喫煙所は限られている。大阪市会では市民から喫煙所の増設を求める陳情が相次いでおり、対策の遅れが課題となっている。

 大阪市環境局は優先度の高い63エリアを選定し、公設喫煙所の整備を進める方針を示すが、10月31日の決算特別委員会で、供用開始が最短でも2027(令和9)年5月になる見通しが示された。候補地は年内に取りまとめ、2026年度に入札・工事を開始する計画。設置する喫煙所はコンテナ型が基本で、1基あたり約3,000万円(5年リース)の費用がかかる見込みという。

 一方、市議会からは「市民はコンテナ型を求めているわけではない」「灰皿一つで喫煙所は成立する」として、開放型の簡易喫煙所導入やスケジュール短縮を求める声が上がっている。条例の目的が「街の美化」であることを踏まえ、柔軟な設置方針を求める意見も多い。環境局は「手続きや工事期間の大幅短縮は難しいが、できる限り早期供用を目指す」とし、開放型についても「立地や周辺環境に応じて検討する」としている。

 こうした中、大阪市商店会総連盟(大阪市商連)は調査会社に委託し、「大阪市内における分煙環境の更なる整備促進について」と題するレポートを公表した。駅の乗降客数や滞在人口、インバウンド観光客の増加を踏まえた試算によると、市内に必要な喫煙所数は837カ所にのぼるという。特に観光客が集中する中央区や北区などでの整備が急務だと指摘。

 大阪市商連は2022年の条例改正検討時にも影響調査を実施しており、今回は2025大阪・関西万博やインバウンド回復による人流増を踏まえた更新版となる。商店街では条例改正後、灰皿や簡易喫煙所を自費で設置するケースが増え、負担増に苦しむ店も少なくない。喫煙所を備えた大規模店舗に客足を奪われる例も見られ、商店街の持続可能性が懸念されている。

 同レポートでは、現行の厳格な設置基準を緩和し、地域特性に応じた簡易型喫煙所の導入、開設・維持への補助金制度の拡充、たばこ税の活用による財源確保などを提言。大阪市のたばこ税収のうち、路上喫煙対策に充てられているのはわずか約3.6%にとどまっており、総務省も分煙施設への活用を推奨していることから、「たばこ税はたばこ政策に使うのが自然」とする声が上がっている。

 東京都千代田区では徒歩2分圏内に喫煙所があるが、大阪市では5分以上かかる場合が多い。市の面積は千代田区の約19倍であるにもかかわらず、喫煙所数は2倍強にとどまるなど、アクセス性の悪さが条例遵守を難しくしているとの指摘もある。

 分煙環境の整備が遅れれば、路上喫煙やポイ捨て、失火リスクの増大といった問題が続くおそれがある。市民マナーの向上と「商都・大阪」のにぎわいを両立させるためにも、喫煙所整備の早急な対応が求められている。

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