2024年のクレジットカード不正利用被害は555億円と過去最多を記録した。前年から約2.6%増え、増加傾向に歯止めがかからない。インターネットバンキングの不正送金被害も86億円と高止まりしており、フィッシング詐欺による情報流出が背景にある。
フィッシング対策協議会の報告件数は多い月で25万件近く、今年10月も19万3330件を記録。偽メールや偽ECサイト、SNS広告を通じて、利用者のID・パスワードやカード情報を盗み取る手口が確認されている。
同協議会事務局長の吉岡道明さんは「見た目は本物と変わらず、差出人アドレスの偽装や本物のサイトをコピーしたケースも多い。メールやSMSのリンクには触らず、公式アプリやブックマークからアクセスを」と注意を促す。
特にスマートフォン利用の拡大で、画面の小ささが偽サイトへの誘導を見抜きにくくしているという。さらに、ワンタイムパスワードを入力させて即時に突破するなど、技術的にも高度化が進んでいる。
記者自身もつい最近、インスタグラムに「人気ブランドが79%オフ」と表示された広告が流れ、日頃愛用しているブランドだったこともあり、つい購入手続きを進めてしまった。
クレジットカード番号を入力したが、決済画面で何度も弾かれた。不審に思い調べると偽サイトと判明。すぐにカード会社の盗難・紛失窓口に連絡して停止したため、金銭被害は免れたが、住所や電話番号などの個人情報は抜き取られた可能性がある。「まさか自分が」と思っていたが、ほんの数分の油断で危険はすぐそこにあった。
実業家の堀江貴文さんや元ZOZO代表の前澤友作さんも、2年前にSNS上の偽広告に名前や顔を悪用され「一切関与していない」と警告していた。著名人を装う手口から、SNS広告やメールを経由した巧妙な誘導まで、フィッシング詐欺は今も形を変えながら拡散を続けている。
同協議会の吉岡さんは「不自然な割引広告や無名の安売りサイトには注意を。正しいサイトURLを確認し、ネットのプラウザに直接URLを入力することが大事」と話した。
