大阪万博の茅(かや)を地域資源に 日本民家集落博物館でセレモニー ミャクミャク登場で長蛇の列

 「~いのち輝く温故知新の博覧会~古民家フェスティバル」が開催されていた日本民家集落博物館(豊中市)で22日、大阪万博に出展していたシグネチャーパビリオン「EARTH MART」で使用された茅葺(かやぶ)き屋根の茅を、館内民家の葺(ふ)き替え用の材料としてアップサイクルする「茅引き継ぎセレモニー」が行われた。

 セレモニーでは、茅の魅力や大切さを発信するため、万博公式キャラクター「ミャクミャク」と大阪府広報担当副知事「もずやん」が登壇。もずやんから日本民家集落博物館の市本館長に茅が引き渡され、万博の資材を地域の文化継承に生かす取り組みが披露された。

 当日は「ミャクミャク」を一目見ようと早朝から長蛇の列ができるほどの人気ぶりで、セレモニーが行われた場所は人で埋め尽くされた。

 「ミャクミャク」人気は衰える兆しがみえなかった。

 セレモニー後は多くの来館者が同博物館の敷地内に移築されている古民家を見て回ったり、古民家のシンボルである茅葺き屋根や木材にちなんだ、自然素材を使ったススキのミニほうき作りや、ヨシを使った灯りアート作品、木育ワークショップなどの体験型ワークショップに参加して茅の文化的・環境的な価値を身近に体感していた。

 筆者もミニほうき作りにチャレンジし、万博で使われていた茅を一部含めたほうきを完成させた。

 一般の参加者たちも青空の下、楽しそうに茅と格闘していた。

 ほかにもコマまわしやお茶席体験、着もの着付け体験などがあったり、歴史や文化に基づく体験型ワークショップに加え、古民家に設置されたARマーカーにスマートフォンをかざすと昔の暮らしを描いたイラストが浮かび上がる「古民家AR体験」も用意。大人から子どもまで楽しめる内容となった。

 同博物館は、日本各地の代表的な民家を移築復元し、関連民具と合わせて展示するために1956(昭和31)年に日本で最初に設置された野外博物館。

 豊中市の服部緑地公園の一角で梅、桜、竹、柿、その他多くの樹木や草花に囲まれた約3万6000平方㍍の敷地内に、北は岩手県「南部の曲家」から南は鹿児島県「奄美大島の高倉」まで12棟の民家を集めている。

 いずれの民家も17から19世紀(江戸時代)に建築され、昭和30年代まで人々が生活を営んでいた本物を移築している。その他に奄美大島・山陰のクリ船、堺の風車なども展示している。各民家は、地方固有の風土・習慣から生まれた特色を色濃く残し、景観的に優れたものになっている。

 そこには、その土地の自然を生かし、調和を図りながら生活を営んでいた人々の知恵が随所にうかがえる。

 同博物館の閉館時間は通常午後5時までだが、同フェスティバル中はナイトミュージアムが開催されていた。

 1956年の開館以来初めて、一般来館者に館内を夜間公開したのだ。飛騨白川の合掌造り民家をはじめとした館内の古民家群がライトアップされ闇夜にその姿を浮かび上がらせた。

 ほかにもナイトコンサートや夜空を幻想的に灯すスカイランタンなどのイベントを実施し、夜の情景の中で日本の伝統建築の美しさに感嘆の声が上がっていた。

 普段は列ができるほどの来館者が訪れることはなさそうだが、実際に訪れてみると、移築されている古民家は一見の価値ありの建築物だということがすぐにわかる。火を起こした囲炉裏があったり、釜戸があったり、当時の生活の様子を説明する資料からどんな生活を送っていたのかを知ることができ、かなり充実したコンテンツだといえる。

 自然環境の恵まれた立地で、登り下りのある地形や季節柄綺麗な紅葉もみることができ、家族連れやカップル、親子など幅広い層が楽しめる場所だった。

 大阪府内で、梅田から30分ほどでいける同博物館、実はかなり穴場かもしれない。

■日本民家集落博物館/豊中市服部緑地1-2/営業 午前9時半~午後5時

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