日本円の普通預金は0・001%だ。最近ではネット銀行の普通預金0・1%~0・2%が普及しつつあるが、米国の金利上昇を背景に高金利で運用できる米国ドル建て預金に注目が集まっている。
三井住友銀行は9月25日から、米ドル建て定期預金の金利を現在の年0・01%から5・3%(半年と1年)に引き上げた。米国の金利が昨年3月から上昇し続けていることから、連動させる仕組みになった。
ネット銀行の中にはすでに、米国の金利に連動しているところもある。米ドル建て定期預金1年物で、SBI新生銀行は5・3%、auじぶん銀行が5・1%、ソニー銀行で5・0%程度の設定だ。三井住友銀の引き上げには、こうしたネット銀に対抗する狙いもあるという。
ニュースを見て、ドル定期の利回り大幅アップに飛びつきたくなる。しかし、ドル建て定期預金の場合は、為替変動のほか、為替手数料や税金、期間に注意しなければならない。
例えば年利5・3%で年間100万円を運用する場合のコストを確認してみよう。円からドルへの為替手数料で片道50銭だとすると、往復で1ドル1円かかる。つまり運用益の1%が為替の手数料だ。
さらに、満期時に換金した場合の税率は約20%だ。これらのコストをざっくり合計すると実質の利回りは3・2%となる。これにドル円相場の変動が影響されるわけだ。預金前より円安であれば増価、円高だと減価する。為替差損益が3・2%より円高に振れると円換算の元本が目減りするリスクを伴う。
また、広告に表記してある「6か月物」「1年物」というのは利回りの適用期間だ。満期後にどうするのかという出口戦略を持っておきたい。
では、どうすればいいのか。株式や為替相場など金融情報に詳しい大阪FX教室(豊中市)の奥澤智宏さんに話を聞いた。
日本円で預けていてもお金は増えない。しかし物価高は着実に進んでいる。物価高に勝つ方法として米ドル建て定期預金が注目されています。しかし、為替変動リスクのため運用益以上に負けるリスクもある。
そこで提案したいのが、期間の分散投資です。これをドルコスト平均法といって、〝一括〟でドル建て預金するのではなく、何回かに分けて行うと、購入時の取得単価を平均値に近づけることができます。積み立てのメリットは購入単価を分散するところが最大のメリットですね。
また、円からドルに換えるときの為替手数料は銀行各社で異なります。片道1ドル50銭円のところもあれば、25銭や6銭で済むところもある。為替変動は自分の力でどうしようもないけど、手数料などは工夫次第で9割近く安くすることができます。
これまでお話した外貨預金は銀行口座になりますが、投資にも興味があれば証券口座を開設することをお勧めします。株式をはじめ、債券、安全性が高い債券を集めた外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)などを始めることができます。
投資をしたくない人の主な理由は、元本割れのリスクだと思います。例えば、国債だと満期まで保有で国が破綻していない限り額面金額の償還を受けることができます(つまり元本割れしにくい)。
また、定期的に利子が支払われ、満期時に元金が戻る「利付け債」や、利子はないが、始めに予定の額面より安く購入して、満期時に予定額面が受け取れる「ゼロクーポン債(ストリップ債)」というものがあります。もちろん、預金と同様に高金利の恩恵が受けられる米国の国債を買うこともできます。なぜか取り扱っている会社が少なくPRもあまりされていないですが(笑)。
金利や手数料の比較など、今後はちょっと知っているだけ手元に残るお金が変わる時代になるかもしれませんね。