AI時代にSI企業はどう生き残るか 日本システム技術が中期経営計画 「価値を生む仕組み」再設計へ

 大阪で創業した完全独立系IT企業の日本システム技術(東証プライム)が5月27日、東京本社で2026~28年度を対象にした中期経営計画の説明会を開いた。昨年発表した長期ビジョン「JAST VISION 2035」で掲げる「誰もが知る課題解決企業へ」の実現に向け、30年度までの最初の3年間を「選択と集中」による事業変革の期間と位置づけた。35年度には現在の324億円の売上高を1000億円へ引き上げる挑戦的な目標を掲げており、今回の中計はその第一歩となる。(佛崎一成)

価値が生まれる仕組みそのものを作り変える「リ・デザインDX」を打ち出した平林社長

 登壇した平林卓社長は国内企業のDXについて「システムを入れる段階から、業務や経営の成果をどう生み出すかにフェーズが移っている」と指摘。一方で、現場ではシステムやデータが存在していても、「顧客接点や業務オペレーション、データ活用が分断され、事業成長につながる価値創出まで至っていないケースが多い」と明かした。

 さらに、生成AIやAI駆動型開発の進展で、従来のSI業界のあり方そのものが変わりつつある。設計、開発、運用といった工程の一部はAIに代替される可能性が高まっており、「変わらない企業は生き残れない」と危機感を示した。その上で同社が打ち出したのが「リ・デザインDX」だ。

 従来のDXが業務をデジタルで置き換える取り組みだとすれば、リ・デザインDXは「価値が生まれる仕組みそのものを作り変える」という考え方。コンサルティング、システム開発、運用支援を個別に提供するのではなく、課題解決の過程で得た知見やノウハウを蓄積し、横展開できるサービスとして体系化するという。単発の受託開発から、継続的に価値を提供する事業モデルへの転換を目指す。

3領域で具体戦略

 具体策として、「DX&SI」「教育」「ヘルスケア」の3つを成長の柱に据える方針が示された。共通するのは、単にシステムやAIを導入するのではなく、現場にある知見やデータを活用し、成果が継続して生まれる仕組みに作り替える点だ。各領域の担当者からは具体的な戦略も説明された。

【DX&SI】「作って終わり」から脱却

 DX&SI事業について説明した北村地彦上席執行役員は、IT業界を取り巻く変化について「DXは導入から成果の時代へ、SIの価値は構築から改善へとシフトしている」と話した。

 同事業は、25年度のグループ売上高の66%に当たる213億円を担う主力事業だ。取引先は300社を超え、創業以来50年にわたって蓄積してきた業務知見を強みにしている。企業や官公庁を対象に、標準化が難しく、大手企業が踏み込みにくい複雑な業務領域を主戦場としている。

「AIをいかに業務に定着させるかが、SI企業の新たな役割」と話す北村上席執行役員

 社会では少子高齢化による人材不足が深刻になっている。30年には79万人のIT人材が不足すると見込まれる一方、生成AIの普及でシステム開発の一部は自動化が進む。こうした中で「SI企業は不要になるのではないか」という見方も出ている。

 ただ、同社はSI企業の役割がなくなるのではなく、変わるとみている。北村上席執行役員は「AIをいかに業務に定着させるかが、SI企業の新たな役割」と位置付ける。

 従来の受託開発は、案件ごとにシステムを作って終わる形になりやすかった。そのため、現場で得た知見や成功事例が担当者の中にとどまり、別の部署や企業に広がりにくいという課題があった。

 そこで同社は、成功パターンを再現・再利用する「オファリング循環モデル」へ転換する。課題解決の過程で得た知見を標準化し、他の現場や業界にも横展開できるサービスとして体系化する考えだ。

 具体例として挙げたのが、物流・小売業界のサプライチェーン改革だ。現場では、労働力不足、在庫管理の非効率、配送コストの増大、再配達など複数の課題が重なっている。

 同社は、ロボットや自動化による省人化、IoTとAIによる在庫のリアルタイム可視化、AI配車による積載効率の向上などを組み合わせ、業務全体を見直す。北村上席執行役員は「個別の課題を点で解決するのではなく、業務全体を俯瞰して再設計する」と説明した。

 27年度には、AI駆動開発を事業全体に導入する計画だ。DX&SI事業の売上高を213億円から280億円へ引き上げ、オファリング型ビジネスの比率を25年度比で6倍に高める目標を掲げている。

【教育】大学の生き残りをデータで支援

 教育領域では、石川篤事業部長が説明に立った。同社が提供する大学向け統合業務システム「GAKUEN」シリーズは、大学の学籍、成績、履修など業務全体を支える製品で、現在220校以上に導入されている。4年制大学での導入シェアは27.3%と業界トップだ。

 石川事業部長は、大学を取り巻く環境について「大きな転換点にある」と説明した。

 背景にあるのは、急速な少子化による18歳人口の減少だ。大学や短大の募集停止が相次ぎ、学校法人の統合や女子大の共学化も進む。私立大では半数超が定員割れを起こしており、大学は生き残りに向けた改革を迫られている。

 こうした中で、同社が課題として着目するのが、大学内に蓄積されている教学データの活用だ。学生の成績や履修状況などのデータは大学に蓄積されているものの、学生支援や経営判断に十分生かし切れていないケースが多いという。

 石川事業部長は「学生がどこでつまずいているのかを早期に捉えきれない。フォローが後手に回ることで退学や休学につながり、大学の財政にも影響が及んでいる」と指摘する。

 このため同社は、経験や勘に頼った大学経営から、データに基づく大学経営への転換を支援する。業務の効率化で教職員の時間を生み出し、その分を学生支援や魅力ある大学づくりに振り向けられるようにする。

「教育総合企業への変革を進める」と力を込める石川事業部長

 具体策の一つが、愛媛大との共同研究で進めている「アーリーアラート」の仕組みだ。GAKUENが持つ教学データと、大学IRの知見を組み合わせ、学生のつまずきや退学につながる兆候を早期に捉える。将来的には、その成果をGAKUEN製品に取り込み、他大学にも広げていく考えだ。

 また、学生からの問い合わせに24時間対応するAIチャットボット、デジタル学生証、教職員のノウハウを活用したAIエージェントなども展開する。教職員の業務負担を軽くし、学生一人一人に向き合う時間を増やす狙いがある。

 短中期では、220校を超えるユーザーネットワークを生かし、大学間の連携や卒業生向けのリスキリング市場への展開を進める。長期的には、小中高校へも領域を広げる計画だ。石川事業部長は「単なるシステム提供にとどまらず、教育総合企業への変革を進める」と力を込める。

 今後は国立大への展開も加速する。24年には東北大でGAKUENが稼働し、26年には九州大での導入も決まった。国立、公立、私立大の連携を促し、地域の教育力維持や活性化にもつなげる考えだ。

【ヘルスケア】医療費適正化へ健康行動を後押し

 ヘルスケア領域について、同社は「AI時代の医療費適正化と健康増進の意思決定を支える事業」と位置付ける。

 現在、同社は健康保険組合などの保険者や行政に対し、データヘルスの実行支援、レセプト点検、保険者業務支援プラットフォームなどを提供している。さらに、許諾を得たデータを匿名化し、ビッグデータ活用サービスとして企業や大学、研究機関にも提供する。そこで生まれた分析結果や知見を、次のサービス改善につなげる循環型のビジネスモデルだ。

 青木亮執行役員は、健康領域の社会課題を「高齢化と人口減少」と説く。働く人が減れば、医療費を支える保険料収入は細る。一方で、高齢化によって医療費は増える。医療財源のバランスが崩れつつある中で、限られた財源をどう有効に使うかが問われている。

ヘルスケア領域での可能性について説明する青木執行役員

 一方、企業の健康経営やウェルビーイングへの関心は高まっている。データや生成AIを活用した新たなサービスの可能性も広がる。ただ、医療・ヘルスケア分野は法律や制度、専門知識が複雑で、AIサービスがあっても現場で成果につなげるのは簡単ではない。

 そこで同社は、医療ビッグデータと業界知見を強みに、AIで行動変容と成果創出を実現するプラットフォーマーを目指す。保有する匿名レセプトデータや健診データは1000万人以上。薬剤師、保健師、管理栄養士、医師ら専門人材の知見に、同社のシステム開発力を組み合わせる。

 青木執行役員は「データを使える資産に変え、施策を再現性ある事業にしていく。一人一人に寄り添い、行動変容が続く仕組みを提供したい」と説明する。

 具体的には、データ分析で対象者を抽出し、施策を実行し、その効果を測定する。このPDCAを繰り返すことで、実行するほど精度が高まる仕組みを目指す。

 活用するデータは、レセプトや健診データだけではない。働き方、ストレスチェック、気候、地域環境、生活習慣などのデータも組み合わせ、個人の生活スタイルに合った健康支援プランを作る。単に健康情報を届けるのではなく、本人が実際に行動しやすい支援につなげるのが特徴だ。

 短期的には、データヘルスの対象範囲を健診やPHR(個人の健康・医療記録)へ広げ、保険者業務全体を支えるプラットフォーム化を進める。中期的には、企業の健康経営や自治体のスマートシティとも連携し、社会の健康インフラを支える存在を目指す。

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