インバウンド需要の拡大を背景に、大阪府を訪れる外国人は増え続けている。昨年、府内の訪日外国人客数は約1760万人と過去最多を記録。なかでも道頓堀や心斎橋を擁する「ミナミ」は、来阪した訪日外国人の約7割が訪れる大阪屈指の観光エリアだ。
一方で、外国人客の急増に伴い、「観光公害」と呼ばれる課題も顕在化している。ポイ捨てや路上喫煙、トイレ不足などがその代表例だ。

こうした状況を受け、大阪府は「ごみ、たばこ、トイレ、清掃」を重点分野とする10億円規模のオーバーツーリズム対策関連予算を確保した。同対策自体は2025(令和7)年度から進められてきたが、ごみやたばこを含む4分野を重点項目として明示し、大規模補助金として展開するのは今回が初めてとなる。
観光公害が起きる背景の一つとして指摘されるのが、設備の「分かりにくさ」だ。学研ホールディングスのグループ会社が運営する多言語旅行情報サイト「GOOD LUCK TRIP(好運日本行)」が訪日客を対象に実施した調査によると、旅行中に困ったこととして最も多かった回答は「ごみ箱の少なさ・場所の分かりにくさ」で、86・4%に上った。次いで「公衆無線LAN(Wi-Fi)環境」(80・1%)、「多言語表示の少なさ・分かりにくさ」(62・1%)が続いた。
喫煙環境についても同様の傾向がみられる。同調査で喫煙者に絞った設問では、96%が「喫煙できる場所が少ない、または分かりにくい」と回答。2023年の同調査(44・3%)から大幅に上昇しており、喫煙所への需要の高まりがうかがえる。さらに、喫煙所が見つからない場合に「我慢できずに吸ってしまう」と答えた人は過半数に上った。

大阪市では2025年1月27日から路上喫煙を禁止しているが、条例施行後も路上での喫煙が確認されている。「ルールを知らない」だけでなく、「場所が分からない」といった受け入れ環境の不備が一因とみられる。
案内表示の工夫で行動改善につながった事例もある。広島県の宮島口では誘導標識の設置・改善によってポイ捨てや路上喫煙が減少したという。ごみ箱や喫煙所を増やし、「捨ててよい場所」「吸ってよい場所」を誰にでも分かりやすく示す環境整備が、観光公害解消の一助となりそうだ。
観光客が多く集まるエリアで、ごみ箱や喫煙所を適切に配置し、多言語で分かりやすく案内することは、観光公害対策だけでなく、街の魅力向上にもつながる。大阪屈指の観光地・ミナミでも、国内外を問わず誰もが利用しやすい環境整備が求められている。 また、こうした取り組みをミナミだけにとどめず、大阪府市全体の受け入れ環境整備へ広げていく視点も欠かせない。今後さらなるインバウンド需要の拡大が見込まれる中、喫煙所やごみ箱の整備といった基礎的なインフラについても、実情に応じた柔軟な予算活用が期待される。
