「努力したくない、でも今すぐ小顔になりたい」 受講生8000人 お顔のマジシャン・さおりさんの〝ずぼら美容〟はなぜ人気?

「秒で顔が変わる・マジカルフェイシャル」を考案したさおりさん

 SNSで容姿に関する情報があふれる中、自分の手だけでセルフケアをするオンライン講座が人気を集めている。中でも「お顔のマジシャン・さおり」の愛称で親しまれ、東京・中目黒でサロンを運営するさおりさんは、オンラインで小顔のセルフケアを配信し、約8000人が受講する人気インフルエンサーだ。特に、値段にも効果にもシビアと言われる大阪の利用者が多いという。「すぐに変化を感じる」と話題のさおりさんの〝小顔メソッド〟。広がる背景を追った。

10秒で変化を感じる「魔法」の正体

 「上から下に向けて3回、両手で頭をなでてみてください。1、2、3。では、もう一度頭をさわってみてください。小さくなっていませんか」

 微笑みながら語りかけるお顔のマジシャン・さおりさん。受講生たちは言われるがままに自分の頭をなでた後、手のひらの付け根を左右の耳の上にあて、頭頂部で指先をあわせてみる。

 先ほど測ったときより指が奥まで交差する。「えっ、本当に」「さっきより幅が小さく感じる」と驚きを隠せない受講生たち。時間にしてわずか10秒ほど。まるで魔法にかけられたような感覚だ。

 「現代人は姿勢や緊張の影響で、顔まわりがこりやすく、むくみやすいんです。手で触れてゆるめると、変化を実感しやすい」と説明する。

 さおりさんのメソッドは「凝りが強ければ筋肉が引っ張られて顔が下がる」「詰まりがあるからむくむ」という人体のメカニズムに着目。講座では、自分の手を使ったセルフケアとして手順を体系化し、短時間で続けられる形にしたという。

小顔のセルフケアを実践するさおりさん

〝ワガママ〟を全肯定する「ズボラ美容」

 「昔の私もそうでしたが、大半の人はズボラで、面倒くさがりで、続けられないけれど、すぐに変わりたいと思っている。だから、短時間でできるセルフケアが刺さるのだと思います」

 さおりさんの講座は現在、約8000人が受講している。関西の受講生も多く、東京・中目黒に構えるサロンに、大阪からわざわざ新幹線で足を運ぶ人もいる。

セルフケアで美容費の壁を崩す

 さおりさんが「小顔セルフケア」を編み出した背景には、苦い過去があった。会社員時代、男性から「頼むから化粧を落とさないで」と言われ、その言動に傷つき、容姿に自信を持てなくなった。さらに、気持ちを立て直すために通い始めたエステも継続費用の高さが壁になる。

セルフケアを始める前の31歳のさおりさん

 「1回の施術で1万円、月に2回通えば1年で24万円もかかってしまう。試しに一生通い続けるといくらになるかを計算したんです。するとその額は1000万円を超えてしまうことがわかった。会社員だった当時の私の収入では、さすがに無理があると感じました」と振り返る。

 「1000万円を払えなければ、美しさを維持できない」という現実を知ったさおりさん。「それなら自分でケアできるようになればいい」と考えが変わっていった。

 そこから勉強の毎日。当時は小顔に着目したセルフケアの講座がなく、さまざまな施術を自身で試しては技術を学ぶしかなかった。プロ向けの講座に数十万円を投じたこともあったが、そこで学んだのは「前頭骨」「後頭骨」など素人には呪文のような専門的な内容ばかり。

 こうした専門的な内容や複数の施術から得た知見をもとに〝ズボラな人でも家庭で再現できる手順〟を体系化。現在では、お笑い芸人やモデルなどの複数の芸能人もサロンに通っており、約8000人が受講する巨大な講座に成長した。

体重は10年前より4㌔増えたにもかかわらず、見た目が若返った40歳のさおりさん

美容医療の拡大と、心の負担に向き合う視点

 近年、見た目で人を差別したり判断したりする「ルッキズム」という言葉が流行するように、SNSを通じて「容姿が気になる」という日本人が増えている。このため、以前に比べて美容医療を身近な選択肢に捉える人も増えた。矢野経済研究所の調べによると、美容医療の市場規模は2020年に約4050億円だったが、24年には約6310億円と5年で1.5倍に拡大している。

 美容医療が身近になる半面、施術で「腫れ」や「痛み」を訴えるトラブルが増加。「解約したら高額な医薬品を請求された」などの相談も増えている。独立行政法人国民生活センターによると、美容医療サービスに関する相談は20年度に2千件程度だったが、24年度には5倍の1万件を突破した。

 さおりさんは「美容医療そのものを否定するつもりはない」とした上で、「『整形したことが彼氏にバレるのが怖い』『子どもが昔の私に似てきたらどうしよう』など、施術後も心配が尽きず悩んでいる人もいる」とトラブル件数からは見えない実情を明かす。

セミナーに登壇するさおりさん

 メスを使わない「プチ整形」などで心理的なハードルが下がり、増加の一途をたどる美容医療だが、さおりさんのセルフケアの場合は副作用がないのも利点だ。「鏡を見て『今日の私、いい感じじゃん』と思える瞬間が増えると、気持ちも前向きになりやすい」と話す。

 実際に、受講生に話を聞くと「小顔になれたことで、性格が明るくなった」「メンタルケアの本を100冊読むより、10秒で自分の顔が少しだけ好きになる方が、遥かに効果的」と話す人も多かった。

海を越える小顔メソッド

 さおりさんの活動は海外にも広がっている。2022年には仏カンヌ国際映画祭のイベント、23年には米ロサンゼルスでアカデミー賞関連のイベントにも出場。世界の俳優たちも体験した。

 「人種や骨格の違いがあっても、顔まわりの緊張をゆるめるという発想は共有できることがわかった」

 国内だけでなく海外も視野に入れるさおりさん。根底にあるのは、かつての自分自身と同じように「鏡の前で立ちすくむ人の気持ちを軽くしたい」という純粋な思い。「10秒の魔法は、みんなの洗面台の鏡の中にすでに用意されているんです」(さおりさん)

さおりさんの書籍「一生使える! マジカル・ケア 小顔は自分でつくれます」(主婦の友社)
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