大阪産業大学附属高等学校「一般旅客自動車運送事業研究会」

大阪産業大学附属高校(大阪市城東区)では、全国的に珍しい取り組みが始まっている。その名も「一般旅客自動車運送事業研究会」。部活動の枠を超えて、〝代表取締役〟や〝営業部〟、〝運輸部〟など実社会と同じ役職を設けて会社組織のような活動をしている。同研究会は2025年に発足。本物の大型バスを教材として、運行・管理・営業などの業務を実践的に学ぶ。

「知識を学ぶだけでなく、実際に運営してみることで初めて見える課題がある」
この取り組みを立ち上げたのは、顧問の髙岡忠史教頭。「教室内の学びだけでは社会は見えにくい」との問題意識が出発点だった。 社会課題を“自分事”として捉える教育の必要性を感じていたという。
そこで着目したのが、人々の生活を支えるインフラである「交通」だった。路線バスの廃止が相次ぐなど、少子高齢化やドライバー不足により地域交通の維持があらゆる自治体で課題となっている。観光とも関わる分野でもあり、社会を多面的に捉えられる点も重視した。
「知識だけでは見えない社会を学んでほしい」と髙岡教頭は話す。現実に近い環境で活動することで、教室では得られない学びを生み出している。
また「本来、『職業』は憧れの対象であるはずだが、近年はネガティブに捉えられがち。仕事の楽しさややりがいを伝えていきたい」という思いも設立の背景にある。実体験を通じて業界の魅力を知ってほしいという考えから、企業との連携も進めている。

髙岡教頭は大型自動車第二種免許や「運行管理者(旅客)、第一種衛生管理者」等の国家資格を有し、安全・衛生面に十分な配慮をしながら指導している。(撮影時は駐車中)
バスで広がる〝教室の外〟の学び
研究会は現在、整備、ガイド、営業、総務といった役割に分かれ、実務を意識した活動を行う。
代表兼整備士を務める大矢理人さんは「周りをまとめる意識が強くなった」と話す。関西国際空港への送迎では「段差に気を配りながら誘導する中で、〝気遣い〟の大切さに気づいた」という。整備業務では、車両の構造理解や点検、安全管理などの基礎知識を学び、安全運行を支える役割を担う。現在は運行前点検や可能な範囲で整備を行っている。

ガイド担当の金子まゆさんは車内アナウンスや誘導、接客を担う。「最初は緊張してうまく話せなかったが、今は落ち着いて説明できるようになった」と成長を実感することもあるそう。

営業担当の西岡朋哉さんは企画やスケジュール管理を担う。「さまざまなイベントに参加し、活動の幅を広げたい」と意欲を見せる。

また、「普段出会えない業種の人たちとつながれるのが楽しい」と話す生徒もおり、学外との接点が視野の広がりにつながっている。
髙岡教頭は「見えているものがすべてではないことを知り、物事の本質を捉える力を養ってほしい」と話す。


実践が育む将来への視野
活動の広がりは学内にとどまらず、資格取得にも力を入れる。すでに「運行管理者基礎講習」を修了した生徒もおり、今後は高校在学中に国家資格である運行管理者試験への挑戦を見据えるほか、実務に直結する資格にも取り組む予定だ。
髙岡教頭は「外部との連携を通じて“できること”を増やし、生徒の可能性を広げていきたい」と話す。今後は楽しむ活動だけではなく、バスから拡がる理論的・学問的な学びを行っていきたいという。
整備分野に関心を持つ大矢さんは、小学生の時に図鑑を見てトラックの外観に興味を持ったのがきっかけで。中学生では「FORMULA DRIFT JAPAN※」の動画を観てメカニックの姿に憧れたそう。将来は整備士、ロードサービスといった職業につきたい」という夢を持ち、「大学で自動車工学を学び、整備士資格の取得を目指したい」と意欲を示している。
※本格的なドリフト競技の日本シリーズ
ガイド担当の金子さんは「安全運行を支えながら、良いサービスを提供できるガイドを目指したい」と話し、秘書検定や国内旅行業務取扱管理者取得への挑戦にも関心を寄せる。

地域課題と向き合いながら、企業や大学と連携し、学びをリアル社会へとつなげていく同研究会。高校生が実践を通じて社会や仕事への理解を深める取り組みとしても注目を集めそうだ。


