【外から見た日本】変わりゆく労働環境

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将


 先月、シンガポールからきた製作スタッフと一緒に撮影をする機会があった。元々、日本側でカメラマンと音声担当を用意する予定だったのだが、海外のドキュメンタリー番組の撮影経験がないということで、カメラマンがシンガポールから来ることになり、その後、音声機材込の料金が納得いかない、ということで音声担当もシンガポールから来ることになった。

 これが何を意味しているかわかりますか?元々日本人が担当するはずだった仕事が外国人に奪われたということです。せっかく外貨を稼げるチャンスだったのにその機会を逃してしまったのです。

 私が仕事をしている世界ではこの様に国境を超えて仕事の発注があり、その仕事を受ける人も日本で撮影があるから日本人が受けるのが当たり前、ではない環境になっているのです。経験値や仕事をこなすのに必要な知識、必要な機材を使い慣れているかなど、さまざまな要件によって誰が仕事を得るかが決まります。 海外の人たちと仕事をするわけですから、英語でコミュニケーションができるのは当たり前で、それが出来るからと言って何もプラスポイントにはなりません。

 まして英検◯級合格者なんていう肩書きは何の役にも立ちません。そんな時代なんです。今は!

 今回やってきた音声担当の知り合いで、番組に音を付ける「音効」という仕事をしている人は、コロナでリモートワークになったあと、「仕事は全てパソコン上でできる」ということでシンガポールからインドネシアのバリ島へ移住して、変わりなく仕事をしながら快適な人生を送っているそうで す。

 実務的に、私がこの音効さんに仕事を発注することも可能なので、これまで使っていた国内の音効さんの仕事が海外へ流出することもあり得ます。

 外国語のナレーションなど声優さんの仕事も10年以上前から海外で収録しています。この様に私が関わっている仕事のほぼ全ては国境を超えて発注することができてしまいます。

 あくまでも私の周りで起こっている変化を例として取り上げてみましたが、グローバル化した世の中はものすごいスピードで変化していて、今ある仕事も今後どんどん無くなってしまったり、ロボットや外国人に取って代わられたりします。そうなるかならないか、ではなく「いつそうなるか」です。

 若い人は勿論(もちろん)、これからどういう職に就くのか、どんな働き方をしたいのかをよく考えないと本当に食えない時代になります。勤め人になることが良かった時代は終わろうとしています。中堅以上の方も今までの働き方がそのまま通用しなくなって来ている現実を受け入れて変わっていけないと厳しい時代になります。

 縮小する国内市場にしがみつくか、成長するグローバル市場に打って出るか。迷っている暇はありません。


【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。