Spyce Media LLC 代表 岡野 健将
1月20日にトランプ米大統領が誕生しました。再選後から米国社会は変化の兆しを見せていました。
その一つがLGBTQ+といわれる性的マイノリティーへの対応。近年、米企業は性別や人種、国籍、宗教、性的指向などで差別されることなく、多様性が尊重され、組織の強みにもつながるという考えに基づく取り組みを積極的に取り入れてきました。Diversity(多様性)、Equity(公正性)、Inclusion(包括性)の頭文字取りDEIと呼ばれていました。
しかし、トランプの当選後、多くの企業がDEIの採用を取り消しています。
この動きから2つのことが見えてきます。一つはDEIを意識した採用や雇用が好ましい結果を生まなかった。もう一つは企業の多くがDEIを好意的に捉えておらず、社会の圧力などに配慮していたが、トランプが大統領になることで本音を語ることが許されるようになった。もし3つ目を加えるなら、自社の意思に関係なく、トランプの思想に追従した。
どれが正しい理由かはわからないですが、どれも多少なりとも影響しているように思います。
性的マイノリティーの人々が社会生活を送る中で必要な権利を守るための仕組みであったDEIを否定する企業が増えることで、今後、自由に意見や思想を発言する人が増えるかもしれません。それはより一層、米国社会を分断していくことは間違いないでしょう。
一方の日本はどうでしょうか? DEIの趣旨と似た考え方は社会で広く共有されていますが、社会全体がそれを受け入れているかどうかは別問題です。
下手に口を開くと大炎上し、つるし上げられる可能性のある現代で、各個人が何を思っているかなんてなかなか分かりません。思っていることと口にする言葉が一致しないことは頻繁にあります。特に日本人は本音と建前を使い分けますから、実際どのくらいの日本人が性的マイノリティーの人々を受け入れているか推し量るのは難しそうです。
私は米国在住時、最初に就職した会社の面接担当者がゲイでした。後から聞いた話では、この担当者が私の採用を強く後押ししてくれたそうです。就職後もしばらくこの人の下で仕事を学びました。繊細で頭が切れ、たまに見せる「ゲイをなめるんじゃないわよ」という姿に芯の強さを感じました。
また、ルームシェアのアパートへ引っ越した際、男性が二人いたので「どちらが退去するんだ?」と聞いたところ「誰も退去しない」という返事。二人はカップルで一つの部屋をシェアして、もう一つの部屋を私に貸すということでした。結局このアパートでゲイカップルとしばらく生活することになりました。
はっきり言っておきますが、私は男性には全く興味はありません。しかし、私以外の誰かがゲイであるかどうかはその人の問題なので、私自身は全く気になりません。ニューヨークにいるとゲイやレズビアンの人はそこら中にいるので、気にしても仕方ありません。あくまで私の感想であり、感じ方によるものです。米国人の中にも性的マイノリティーの人を毛嫌いする人もいれば、絶対に受け入れない人もいます。
日本では、メディアが伝えるようにみんながLGBTQ+の人々を受け入れているのか、とても疑問です。閉鎖的で周りと同じであることを好む日本人が、自分と違う存在を何の抵抗もなしに受け入れるとは考えにくい。しかし、私はそれでも構わないと思います。
先に書いたように、私個人は仲の良い友人がゲイでも特に気にしません。私以外の人が「ゲイ」を理由に距離を取っても、その人の考えなので、否定しません。
人それぞれ考え方は異なり、物事の感じ方が異なるのは当前です。ダイバーシティーという言葉がよく叫ばれますが、日本語に訳すと「多様性」。多様性のある社会だからLGBTQ+を認めよう、社会の一員として受け入れよう、という考え方には賛同します。しかし、同時に多様性の社会なら「私はそういうのは認めたくない。違うと思う」という人も認め、社会で受け入れてこそ本当の多様性ある社会ではないでしょうか。