
ほその耳鼻咽喉科(北区天神橋)細野研二さんに聞く
重症患者向けの新しい注射薬も
花粉症は今や国民の約4割が患い、企業の生産性低下を招くなど、「国民病」とも言われている。大阪では今年、例年より多くの花粉が飛散すると予測されている。発症のメカニズムや子どもの花粉症増加の背景、治療法の進歩や新薬の効果について、「ほその耳鼻咽喉科」の細野研二さんに話を聞いた。 (竹居真樹)
異なる種類試し、自分に合う薬を
─今年の大阪のスギ花粉の状況は
昨年の3倍に達すると予測され、大阪を含む西日本ではヒノキ花粉も例年並みかそれ以上に飛散する可能性が高い。過去10年の平均と比べ今年は1・5倍くらいと予測している。
飛散開始時期は冬の気温が大きく影響する。1月は比較的、暖かい日もあったが、最近の寒さの影響で症状の出る人は一時的に減少。しかし、本格的な飛散は2月中旬に始まり、気温の上昇とともに急激に増えると見られている。
─発症のメカニズムの例として、水を注いでいき、コップが満杯になると症状が出ると聞くが
花粉が体内に蓄積され一定の限界を超えると発症するという説だが、最近は遺伝的素因や免疫系の乱れなどさまざまな要因が関係していると考えられている。つまり同じ環境下でも個人差があることになる。
─子どもの花粉症患者も増えている
国のスギ植林政策でスギの樹木が増加したことで、子どもが花粉に触れる機会が多くなっていることが要因と考えられる。また、常に清潔な環境で過ごす「温室育ち」が増え、免疫が十分に鍛えられずアレルギーを引き起こしやすくなっている。また、食生活の変化も指摘されている。
─花粉症にはヨーグルトが効く話もあるが本当か
ヨーグルトの乳酸菌は種類が多く、人によって合う、合わないがある。いろいろと試し、腸の中に溜まって活動してくれる乳酸菌を選ぶことが大事だ。ただ一概にヨーグルトが良いという訳ではないので、納豆などの発酵食品や腸に良い食べ物を取り入れる「腸活」で免疫力を高めることは、花粉やアレルギーに良い影響を与えることは間違いない。
─花粉症の新しい薬は
症状を抑える「薬物療法」とレーザーなどの「手術」、舌下免疫療法など根治を目指す「アレルゲン免疫療法」の3つの柱がある。中でも薬物療法で一番新しいのは「ゾレア」。既存の薬で症状が改善されない重症のスギ花粉症に使用される注射薬で高い効果が期待できる。ただ、誰でも処方できるわけでなく、病院で検査し適応するかの判断が必要。費用は体重とアレルギーの強さに応じて高くなるが、目安は3割負担で月に平均1万8000円ほど。子どもも使用でき、大阪であれば医療証が使える。
─妊娠中に花粉症の薬は飲めるのか
妊娠初期は避けた方がいいが、以降は安全性の高い薬なら飲むことは可能。「妊婦が飲んでも安全」と過去の統計で分かっている薬はほぼ大丈夫。病院で相談するといい。
─自分に合った薬の見つけ方は
病院で相談し、鼻みず型か鼻づまり型か、服薬回数、眠気の許容度などから選び、複数の薬を試すのが最も効果的だ。変更時は化学構造式の異なるグループの薬も試してみるとよい。一般に、服用を始めて1〜2週間で効果が分かる。近年、アレルギー治療の選択肢は増えているため、自分に合った治療法を見つけることが大切だ。