歌って踊れる新歌謡ポップスユニット「東京力車」が以前は難しかった西日本での活動を活発化している。神戸新開地で開催の「KOBE流行歌ライブ」では一緒に写真を撮りたいファンで行列。大阪でのラジオ出演などで放送局めぐりも経験した。昨夏に出した「涙ひとしずく」が有線とオリコンで演歌歌謡曲部門のランキング1位となり一気にブレイク。2月には大先輩、山本譲二(74)作詞の新曲「俺らしく…」が出る。現在の顔ぶれになって5年。リーダー石橋拓也(32)は「今年は大阪・関西万博がある。僕たちは三波春夫先生生誕100年の一昨年『握手をしよう~世界に国からこんにちは~』をカバーさせて頂いているのでぜひ夢洲の会場で歌ってみたい」と夢を広げている。
「東京力車」とは元々、人気観光地・浅草で人力車を引き内外の観光客を案内する俥夫(しゃふ)を束ねる会社の屋号。2015年秋に4人で結成され、現役俥夫ユニットとして注目のスタート。その後もメンバーの入れ替わりはあったが「俥夫をやりながら、歌手活動を行う」というコンセプトは受け継がれている。現在の3人は静岡出身の石橋以外は、田井裕一(31)は兵庫県西宮市、白上一成(30)は滋賀県栗東市と関西出身。ステージでのトークにも時折関西弁が混じる。普段は日焼けしたたくましい手足をむき出しにして屋号入り俥夫着で活動する事が多いが、舞台ではビシッとステージ衣装で歌い踊る。新曲ではファッショナブルなスーツ姿も披露し女性ファンの心をくすぐる。
ユニットに加入したきっかけはさまざま。石橋はひたすら格好良さにあこがれて、白上は歌が好きで路上ライブなどをへて、そして田井は放浪の旅の途中で日本文化を外国人に広めたいと志しての加入。「最初は月のうち3分の1が歌と踊りの仕事。残りは人力車を引いていました。今では比率が逆転、でも俥夫の仕事は辞めたくない」と口をそろえる。理由は古き良き江戸の風情を残す浅草へのこだわり。「僕らを育ててくれた街。戻るとホッとする第2の故郷」と笑顔を見せた。
前作では純烈・酒井一圭リーダー(49)に、3人の心の中の不安と野望を見事に表現した詞を提供してもらいヒット。間もなく発売の新作は一途に夢を追って生きる男の決意を示した内容。「前作のヒットが偶然ではなく、良い楽曲を自分たちがキチンと表現できれば〝多くの方に認めて頂ける〟と信じています」と張り切る。
人力車を引いている時の彼らは、客にむしろゆっくりと浅草の景色を楽しんでもらい見るだけでは分からない魅力を語って聞かせ理解してもらう事に務める。3人のパフォーマンスのゴールはまだ見えないが、日々の目標を確実に突破するため、彼らはタッグを組みその時ばかりは全力で疾走し続けている。
(畑山 博史)