上方落語界では最近年間の入門者が1人程度の状態が続いており「将来が心配」との声が出ているが、松竹芸能所属の中堅若手噺家は元気いっぱい。

まず笑福亭一門の入門8年までの4人が8月16日午後、心斎橋角座で落語4席と企画コーナーの会「ガオガオめーめー筋肉祭」を開く。NHK大阪が企画したアイドルユニット「らくご男子」出身8年目の呂翔(27)が企画コーナーを担当。関学大落研出身プロ5年目の喬路(28)は「色々なものをギュッとまとめた1時間半。フレッシュな会です」とPR。小劇場出身の6年目喬龍(32)は「同世代に来て欲しいので新しいものを楽しんでもらいたい」と計画。最も若い4年目喬明は「アイドルになりたかったけどダンスが苦手で」という変わり種だが、イベントの題名にもなった「ガオ」は喬龍、「めー」は喬明を現しラジオ大阪で1カ月限定冠番組に2人で取り組んだユニット名「ガオガオめーめー」の実績がある。喬明は「落語は普段独り芸なので、4人でサークル活動している感じ」と楽しそう。

その喬明は25歳の誕生日となる8月4日夜に角座で「めいちゃんのおたんじょうびぱーちぃー」を開催。師匠の喬介をはじめ一門の先輩・鉄瓶、松五も出演。「誕生日ですから好きにやらせてもらいます。まず開口一番(前座)は喬介師匠に。次に鉄瓶兄さん、中トリは桂ぽんぽ娘姉さん。松五兄さんと森乃石松兄さんには走って天満天神繁昌亭まで私へのバースデープレゼントを取りに行って頂きます」とやりたい放題。体重100㌔を超す超肥満体の石松(44)は「俺を殺す気か!」と突然の指名にびっくり。

その石松は、四代目桂春団治の一番弟子・二代目春之輔(47)と七代目笑福亭松喬の一番弟子・喬若(50)=来春、三代目三喬を襲名予定=と組んだ初の3人会「おんぶにだっこの会(仮)」を8月9日午後に同劇場で開く。石松は笑福亭系二代目森乃福郎一番弟子。春之輔29年目、喬若27年目、石松22年目の中堅ばかり。いずれも一門総領弟子で次世代を担う責任ある顔ぶれが結集。初の3人会で演目はまず3席ずつ示し観客のリクエストで1席ずつを決定。この日の出番順はじめ、会の正式名も観客の意見を取り入れ決定するなど定期開催に向け意欲的。襲名披露を終えたばかりの春之輔は「師匠方に口上へ並んでいただき、お配りする手ぬぐいや扇子をはじめ様々な物が必要で、全てごひいきにお世話になってそろえて頂いた。新たな落語会で3人が化学反応を起こすよう色々な事を試していく末長い会にしたい」と話すと、襲名が近い喬若は真剣に聞き入る一幕も。

上方落語界は独自運営する桂米朝一門を除けば、松竹芸能の桂春団治一門と笑福亭松鶴一門に対し、吉本興業は桂文枝一門、林家染丸一門、笑福亭仁鶴一門が所属。それぞれの直営劇場で所属噺家が出演し切磋琢磨してきた。漫才・コントで吉本優位なのに対し中堅以下の若い落語家は質量とも松竹芸能がリード。同社担当者は「ウチの落語部門は笑福亭鶴瓶という上方一の人気者がいるが、中堅若手にもユニークな有望株が多数育っている」と期待している。
(畑山 博史)