美の探求者その感性と哲学(9)“おもてなし“は大切に思う心から生まれる<久山奈津>

久山奈津/まつげパーマが一般的でなかった1996年に創業。独自の「まつ毛カール」技術や「落ちないマスカラ」で一世を風び。まつ毛デザインと目元美容で、常に日本の先端を走り続ける。一流が集う東京と大阪にサロンを構え、後進の指導にも力をいれている。

 最近、「おもてなしの心が薄れてきた」と感じる機会が増えたように思います。その理由として、どこも効率が重視され素早い対応や生産性を優先する傾向が強いからでしょうか。細やかに対応する余裕が減少していると感じます。
 
 「おもてなし」とは、相手を思いやり、相手のことを考えて細やかな心配りをすることを指します。相手が何を喜ぶか、何を必要としているかを考えて行動し、一つ一つの行動や物に丁寧さと気遣いを込めることです。
 
 例えばスーパーなどでお惣菜を買ってきた時にパックのまま食卓へ並べるのではなく、器にきちんと移し、目で見て心で味わうように準備する。そうすることで、何気ない日常の食事であっても、特別なひとときに変わる。ていねいさがもたらすのは、ただの習慣ではなく、日常の中に豊かさを感じる“力“なのかもしれません。

 掃除も同じく「おもてなし」の一部です。形だけで済ませるのではなく、「お客様に清潔で気持ちの良い空間で過ごしてもらえるように」と思いを込めて、ほこり一つ残さないよう隅々まできれいにしています。それは相手を大切に思う心から生まれる行動です。目に見える部分だけでなく、普段目につかない場所もていねいに整える。清潔な空間を与えることは訪れる人への思いやりの表現ともいえます。ていねいに掃除をすることで空間の美しさが増し、そこにいる人もリラックスして心地よさを味わえるのです。


 大切なのは、相手に心地よく過ごしてもらいたいという気持ちや配慮をもって接することです。相手を特別に感じさせる「思いやりのある心遣い」をすることこそが「おもてなし」だと考えます。
 海外からも評価される日本の「おもてなし」の心をもう一度見つめ直し、「本当の思いやり」をどのように表現するかが今の時代の課題になっていると言えるかもしれません。

(ル・キヤ代表 久山奈津)