【対談シリーズ】元競泳選手(アテネ五輪銅メダリスト)と学習塾代表の滑らない話

元アテネ五輪 銀メダリスト 中西悠子 × 個別指導キャンパス 代表取締役 福盛訓之

 〝笑う門には福来る〟。新教育総合研究会「個別指導キャンパス」の福盛訓之代表が、各界の人たちと語り合う対談シリーズの8人目は、元競泳選手、アテネオリンピック銅メダリストの中西悠子さん。

三角形の土台となる練習量が大切(中西)
情熱がある大人に教えていただく子どもは幸せ(福盛)

岡本依子さん
なかにし・ゆうこ
 1981年、大阪府池田市出身。19歳でシドニー五輪代表に選出。2004年のアテネ五輪、05年の世界選手権では、銅メダルを獲得。08年の北京五輪と3大会連続で出場。現在は枚方スイミングスクールでコーチングスタッフとして活躍。池田市スポーツ親善大使、枚方市教育委員会教育委員。

福盛 オリンピアンの中西さんでも現役時は、タイムが伸び悩むときがあったと思います。どのようにしてモチベーションを保っていましたか。

中西 大きくモチベーションを下げたのは一回ありました。コーチに「辞めたい」と言ったときなんですが、コーチからは「体重が減っているから、もうちょっとやってみたら」と不調の原因とアドバイスを教えてもらいました。そのときはそのまま素直にコーチの言うことに従いました。

福盛訓之さん
ふくもり・としゆき 
 1973年、大阪市出身。大学在学中の19歳で起業。96年に新教育総合研究会「個別指導キャンパス」(大阪市北区)を設立。個別指導塾を全国約350教室で展開している。第21回稲盛経営者賞第1位、第1回大阪府男女いきいき事業者表彰優秀賞、紺綬褒章など受賞多数。

福盛 そのスポンジのような素直さが成長の秘訣ですね。

中西 はい。当時を振り返り素直さが一番大切だったと、今実感しています。あとは水泳が好きだったこと。小学校4年のときに見た岩崎恭子さんの金メダルは衝撃的だった。私も作文でオリンピックに行きたいと書きました。しかし、「どうやったら、楽に泳げるか」ばかりを考えている時期がありました(笑)。結局、この答えは練習量でした。勉強もそうですが、尖がった能力を引き出すには三角形の土台(基礎)が必要でした。

福盛 生徒たちの中にはモチベーションが高い子やそうでない子とさまざまだと思います。

中西 まずは、水泳を好きになってもらいたい。上達する喜びを、感じてほしい。また、私自身も楽しく練習することを心掛けています。生徒のわずかな成長を見つけて、褒めるなど、一人一人への声掛けを大切に行っています。

福盛 子どもたちのわずかな成長を見つけて褒める。まさに学習塾(勉強)と通じるところがありますね。モチベーションが低い子どもでもいかに自己肯定感を高めるか、少しずつ「自分はできるんだ」を発見してもらいたい。
中西 なんでもそうですが、反復練習をしないと上達しない。練習はとても単調なもの。ビート板やボールなど道具を使った練習で工夫することもあります。それで成果が出ると子どもたちも私も達成感、充実感がありますね。

福盛 恩師への思いは。

中西 当時、母にコーチの愚痴を言ったことがあるのですが、親からは「コーチはあなたのことを思って言っているんでしょう」と言われました。それがすごく印象に残っています。母は恩師に私を預ける時、「煮るなり焼くなりご自由にしてください」と言って預けました(笑)。親がコーチを信頼していなければ、子どももコーチを信頼できない。コーチの話を素直に聞けたのもこうした積み重ねがあったからだと思います。

福盛 お任せさせていただいている以上は、先生、コーチを信頼して任せていただきたいですね。受験勉強でも全く同じことが言えますね。苦手単元や勉強のスケジュールなど、生徒と講師の間で密なやり取りがあります。できれば保護者は細かなやり方よりも子どものモチベーションを上げることや、バランスのよい食事や早寝早起きなど規則正しい生活リズムといった生活面のサポートをしてあげることが重要だと思います。

中西 当時の私と母の関係がそうでした。「はい、お帰り」と、おいしいご飯をつくって子どもを迎えてくれる方が、子どもは休息できると思います。

福盛訓之の対談シリーズ⑧

福盛 塾は、学校のテストや受験というサイクルがある。スイミングスクールは継続してもらう工夫とか、モチベーションの保ち方とかはありますか。

中西 スイミングスクールは基礎体力を上げるとか、もっと上級を目指すとか、生徒によって目的がさまざまなので難しいですね。ただ、長く続いたコロナ禍の影響で泳げない子どもが増えています。特に当時、小学校1・2年でプールに入ってない現在の小学校3年は泳げない子どもが多いです。泳ぎ方もですが、子どものうちに体力をつけておくべきだと思います。

福盛 コロナ禍はさまざまなところで影響がありますね。子どもの体力低下は以前から課題になっていますね。勉強が継続できる体力はもちろん、大人になって仕事をする上でも必要ですね。最後に、今後の目標はありますか。

中西 今後はマスターズで日本記録を出したい。バタフライで試合に出ると「きれいなバタフライ、もっとみたいので試合に出てくださいね」とマダムに声をかけてもらいました。現役時代は好きではありませんでしたが、バタフライで良かったなと今は思っています(笑)。

福盛 何かに挑戦している情熱がある大人に教えてもらう子どもは幸せですね。子どもも大人も自身の成長を求めて好奇心と探求心を持ち続けていきたいですね。マスターズでの活躍も期待しています。本日の対談はとても有意義でした。ありがとうございました。