クマの被害は関西でも発生している。奈良県五條市で7月15日朝、自宅敷地内にいた80代の女性がクマに襲われ、顔にけがを負った。命に別状はなかったが、住宅地へのクマの出没は住民に衝撃を与えた。(竹居真樹)

人里に迫るクマ 関西でも目撃相次ぐ 高槻・池田でも痕跡確認 遭遇しやすい環境は
近畿と徳島の7月の目撃情報は、京都が96件と最多で、兵庫13件、滋賀7件、奈良6件、和歌山5件、大阪と徳島がそれぞれ1件だった。9月には高槻市や池田市で痕跡が確認され、豊野町では作業中の3人が大型犬ほどのクマを目撃している。
遭遇しやすい環境は
クマの遭遇事故は交尾期の6月に多く、7〜8月は一時的に減少する。しかし10月以降は冬眠前に木の実などを求めて活動が活発化し、人里近い平野部や谷筋でのリスクが高まる。特にドングリなど山の餌が不作の年は、人里への出没が増える傾向にある。
解析の結果、クマと遭遇しやすい環境として、河川沿いの林(移動の通路として利用)、見通しの悪い草地(隠れ場所となり至近距離での遭遇リスク)、水辺(水飲み場や通路として利用され、水音で互いの気配に気づきにくい)が挙げられる。
鈴とスプレーが有効
クマは目が悪く、耳と鼻に頼って行動する。登山や行楽では、笛や鈴など高音を発する道具が有効で、クマにとっては「警戒の音」として認識される。また、万一近距離で遭遇した場合の最終手段として「クマスプレー」がある。高額だが山に入る際は携行が望ましい。カバンに入れたままでは役に立たないため、いつでも使えるようにしておく。後は事前に使い方を練習しておくことが重要だ。
関西でも頭数増加
関西は京都・兵庫を中心に800〜2000頭、奈良に100〜400頭が生息するとされ、過去に比べ増加している。北海道や東北だけでなく関西各地でもリスクは高まっており、「秋の行楽シーズンこそ最大の注意が必要だ」と警鐘を鳴らしている。
一方、兵庫県庁が発表している「出没予測」ではドングリ類が大凶作だった昨年度に比べ、今季はツキノワグマの出没が少なくなる可能性が高い。兵庫県森林動物研究センターが県内のドングリ類(堅果類)の豊凶調査を実施したところ、今秋の実りは全体として「豊」であることが判明したためだ。
同センターの担当者は「直近3カ月(6~8月)は例年に比べ目撃や痕跡が少ない地域であっても、ハイキングや登山、キノコ採集などで山中に出かける際はもちろん、集落やその周辺においてもクマの被害に遭わないよう十分注意してほしい」と話した。

