【外から見た日本】核共有 日本の取るべき道は?

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏

 少し前に唐突に安倍元首相が「核共有」という言葉を発して一瞬世間を騒がせました。国内ではあまり目立ちませんでしたが、海外では元首相の言葉としてそれなりの影響力を持ち、メディアを駆け巡りました。

 日本は憲法で核保有は禁止されています。しかしウクライナの現状を目の当たりにして、果たして今のままでいいのか? 軍事専門家の間では「議論すらしない」という選択肢は排除するべきでは、と言う人もいます。もしウクライナが核兵器を保有していたらロシアは今と同じ様な行動を取ったでしょうか? 核兵器があればこの悲劇は避けられたかもしれない、と考えるのは間違いなのでしょうか?

 実際、ウクライナはソ連が解体し、独立国となった際、ソ連が保有していた核兵器の一部が国内に存在していました。その後1994年に米英やロシアとの協定で破棄する事に同意した経緯があります。もし破棄していなかったらどうなっていたか…。

 現在欧州ではNATO加盟国がアメリカと核共有を行っています。ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、そしてトルコの 5カ国の国内にはアメリカ軍が管理する核兵器が保管されていて、有事の際は各国の軍隊がその核兵器を使用する事が出来るというものです。

 世界では、アメリカとロシアが約7000発ずつ、中国とフランスが各々300発前後、イギリスが200発前後、そして北朝鮮が 20発程度の核兵器を保有していて、直ちに軍事利用出来る核兵器は約1万発に上ります。それでも冷戦時の約 7 万発からはかなり減少しているのですが。

 振り返って日本はもちろん0。しかし、日本には核兵器の原料となるプルトニウムが47㌧あり、これは約6000発の核兵器を製造できる量に相当します。その上、核兵器の開発から製造だけでなく、核弾頭を搭載出来るミサイルやロケットの製造技術があり、既に所有するF─15戦闘機などは少しの改良で核兵器を搭載する事が可能です。2016年、当時のバイデン副大統領は「日本は一晩あれば核兵器を持てる能力がある」とコメントした程です。

 私が聞いた限り、東南アジアでは、日本が核共有をしたとしても責任ある行動を取ってくれる、と信頼してくれているようですが、中国は早々に猛反発しています。

 果たして、日本は核兵器を持つべきか、持たざるべきか? どちら側にも然るべき指示する理由はありそうですが、この段階でこのテーマで議論する事すら排除すべきなのでしょうか?

【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。