上方落語協会の前副会長で重鎮の4代目桂春團治(78)が11月13日夜、天満天神繁昌亭で「春團治の人情噺(ばなし)」の会を開く。これまで毎年の自分の会では1夜で数席を演じる形式を嫌い1席限定で演じてきたが、今回は得意の人情噺「子は鎹(かすがい)」を落語作家・小佐田定雄に改訂を依頼、ひと味違った内容にしており、さらにもう1席を口演する。意気込みを聞いた。

上方落語の大名跡・春團治を継いで来年で10年目。3代目春團治に入門し今年で丸61年になる。春團治といえば爆笑王の初代は伝説の噺家。戦後の2代目は豪快、3代目は端正な容姿と語り口で舞踊家でも知られた。当代は若い頃は春之助を名乗り、2枚目のテレビコメンテーターとして売り出し、大阪市大(現在の大阪公立大)客員教授も務めるなどマルチな才能で知られ、笑いの多い上方落語界にあって人情噺と怪談でクスリとさせる芸風で独自の存在感を示してきた。
「子は鎹」は別名「子別れ」とも言われ、江戸落語でも知られた人情噺の定番。当代自身、襲名披露でも演じている得意ネタ。道楽者の大工が妻子に愛想を尽かされて家を出られ一念発起して働く。成長した息子にひょこり再会した大工は名乗らぬまま食事をさせ小遣いを持たせ帰すがその金を母に見つかり…と3人のやり取りで進んで行く。「元の内容で私がどうしても納得行かん個所がありまして小佐田先生に相談した。そしたら先生が手を入れて下さって改訂版を作って下さった」と説明。おはこで登場人物に思い入れが強いだけにうれしそうだ。

珍しいもう1席のネタは「決めてまへんね、当日になるかも知れん」と淡々。定席寄席のネタは演者が高座を降りてからネタ帳に書くのがしきたりで、マクラと呼ばれる開口部の雑談中にネタを決める噺家も多い。当日は前名を譲った春之輔と写真家として個展も開く咲之輔が共演。他に南京玉すだれで知られる勢朝が時事ネタ落語を披露。雪鹿も出演し、上方「桂」屋号の3つの一門が総出演。春團治は「桂は江戸落語にもあるので上方はもっと頑張らないと」とライバル心もチラリ。

自身が4代目を襲名、前名を総領弟子・壱之輔に譲っただけに伝統名の継承には強い思い入れがある。六代文枝について「三枝であれだけ人気者になったのに、文枝を継いで14年。今ではすっかり自分の名前にしてはる、大したモンや。四天王の残り2人(米朝と松鶴)もぜひ復活して上方落語を盛り上げてほしい」とエールを送った。

(畑山 博史)
