受け継ぐ手、つなぐ心。今年の「なにわ大賞」は木彫前田工房に

『あんたはえらい!』の精神で、大阪の元気をたたえる「なにわ大賞」。1998年に始まり、今年で26回目を迎えた同賞は、7月28日の語呂合わせ「なにわの日」にあわせ、大阪市阿倍野区で審査会と授賞式が開催された。今年の顔ぶれには、伝統の技を守る職人、道具の文化を広げる老舗、大学発の演劇企画と、大阪の底力を感じさせる受賞者が並んだ。

 最優秀賞の「なにわ大賞」を受賞したのは、大阪市北区天神橋の「株式会社木彫前田工房」。大阪で受け継がれてきただんじり彫刻の伝統技術を礎に、神社仏閣彫刻や祭礼彫刻、建築装飾、オーダーメイドの木彫り作品を手がける工房だ。

オサカー像(トロフィー)を授与された、株式会社木彫前田工房 前田暁彦 代表

 エントリーを決めたのは締め切り直前。知人の強い勧めがきっかけだったという。「職人ですので言葉で伝えるのは苦手ですが、写真や動画を通じて日々の仕事の熱量を感じていただけたことが、今回の驚きの受賞につながったのだと思います」と振り返り、「自分の作品や活動が客観的に認められたことは、これからの創作活動において大きな励みになります。今後も技を磨き続けたいです」と、職人らしい実直な言葉で喜びを語った。

株式会社木彫前田工房 前田暁彦 代表
日光東照宮分霊三日月神輿

 優秀賞は2組。まず、大阪市中央区難波千日前の「一文字厨器株式会社」。同社が運営する包丁ブランド・坂一文字光秀が発起した「一十一(いちとい)プロジェクト」は、道具屋筋から日本の食文化・道具文化を作り、広げ、守っていく取り組みだ。「大阪、そして道具屋筋という場所が、我々の仕事の質を向上させてくれたと強く実感しています」と語り、「今回の受賞は、先代や社員、職人、そして料理人の方々の支えがあってこそ。この喜びを糧に、皆様の力になれるよう一層精進してまいります」と、まちと人への感謝を込めた。

一文字厨器株式会社 田中 諒 代表

 続いて優秀賞に輝いたのが「エデュテイメンツ」。教育(エデュケーション)と娯楽(エンターテイメント)を融合させた演劇企画で、大阪公立大学商学部の本多哲夫教授と同学の学生劇団「劇団カオス」がタッグを組み、2017年からオリジナル演劇を制作・上演し続けている。「限られた予算の中で一人で模索しながら続けてきた取り組みです。正直、受賞は予想外でしたが、自分たちが信じてやってきた活動が認められたことは大きな自信になりました」と、8年におよぶ歩みが実を結んだ喜びを語った。

大阪公立大学商学部 本多哲夫 教授
今年の受賞者一覧

 伝統の技、道具の文化、教育と演劇。分野は違えど、いずれも地道に続けてきた活動が光を浴びた今回の「なにわ大賞」。大阪の元気は、こうした〝続ける人たち〟に支えられている。

(文・写真/石嶋瑞穂)

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