大阪の富裕層 札幌にセカンドハウス 進化する街へ注がれる熱視線

 夏の避暑や冬のレジャーで人気の札幌市が、インフラ整備や都心部の再開発を背景に「第二の拠点」として注目を集めている。関西圏からも熱視線が注がれる中、新たな魅力を放つ北の都の今に迫った。

高層マンションの建設が進む札幌市中心部

大阪の富裕層なぜ、注目? で高まるセカンドハウス需要 新幹線延伸で「観光の起点」から「滞在」の街に

 夏の避暑や冬のウィンタースポーツ、四季を通じた観光のメッカとして人気を集める札幌。北海道のマンションを買う人は、2020年頃までは道民が中心だったが、都心部にマンションが次々と建設され、今ではセカンドハウスとして道外の所有者が3割を超えている物件も少なくない。加えて、市内中心部では続々と再開発が進み、初の5つ星ホテルの進出も決まった。魅力が高まる札幌に迫った。(佛崎一成)

札幌市内では再開発ビルが続々と完成している

ジンギスカンも、小樽の寿司も、トマムの雲海も日常に

進化するジンギスカン

 北海道といえば食の宝庫。大ぶりのネタを手頃に味わえる回転寿司、ウニやイクラなどの海鮮などテレビ塔のある大通公園や、繁華街すすきのには魅力的な飲食店がひしめき合っている。
 道民のソウルフード「ジンギスカン」も有名だ。丸い専用鍋の山の部分で羊肉を焼き、周りの溝に野菜を敷きつめて蒸し焼きにする。肉汁やタレが山から流れ落ちて溝にたまり、エキスが野菜に浸みこんで一層おいしくなる。最近では、韓国料理で注目されるセリをジンギスカンにのせて味わう店も登場し、定番料理も進化を続けている。
 大阪から単身赴任で札幌に来た会社員男性(50)も北海道グルメのとりこになった一人。「どの飲食店もハズレがなく、特に野菜がおいしい。アスパラは見たことがないほど大きく通常の3〜5倍はある。甘みがしっかりしていて味も濃い。大阪で食べていたものと全然違う」と絶賛する。

道民のソウルフード「ジンギスカン」

トマムの雲海まで2時間

 札幌は雪まつりやスキーなど冬の印象があるが、実は夏の避暑地としても人気だ。大阪の蒸し暑さとは異なり、朝晩は比較的過ごしやすい。近年は札幌でも真夏日が増えているが、大阪に比べ湿度が低く、避暑目的の長期滞在者は多い。
 夏はさらに、車を2時間ほど走らせれば、有名なトマムの雲海が楽しめる。早朝に雲海が発生する確率は約40%。星野リゾート トマムの「雲海テラス」は2006年の開業から193万人以上が訪れ、北海道を代表する絶景スポットになった。
 また、秋は紅葉と食の催し、春は遅い雪解けと新緑が見られ、四季を通じて観光できるのが魅力だ。
 また、北海道は全国有数の温泉地でもある。登別や湯の川、十勝川、層雲峡、阿寒湖、ウトロなど読者も聞き覚えがあるだろう。札幌付近にも年間240万人が訪れる定山渓(じょうざんけい)温泉がある。開湯は1866(慶応2)年と古く、切り立った渓谷に座した景勝地でもある。
 北海道を代表する伝統的な港町・小樽も近い。運河や石造倉庫などのレトロな街並みが有名なほか、かつてニシン漁で栄えた港町らしく、100以上が軒を連ねる寿司の街でもある。
 札幌は都市そのものが観光地であり、道内各地へ遊びに行く玄関口でもある。

都心マンションでセカンドハウスの動き

 観光地北海道の拠点として、道外の人が札幌のマンションを購入し、セカンドハウス化する動きも活発だ。かつては北海道にセカンドハウスを構えるなら、草原にたたずむログハウスのような一軒家にあこがれる人も多かったが、近年は便利な札幌中心部のマンションを好むようになった。
 理由は、冬の雪下ろしや雪かきをしなくて済み、豪雪時にも買い物がしやすいからだ。実際に、JR札幌駅北側に23年に竣工した高さ約175㍍の道内最高層マンション「ONE札幌ステーションタワー」でも、契約者の3割は道外。購入した目的の40%がセカンドハウスだったという。
 現在、同物件では最上階を含むいくつかの住戸が販売市場に出ている。物件担当者によると「地下空間を通じて札幌駅まで歩いて4〜5分ほど。立地に希少性があり、売却時もタワマンの場合は資産性が維持されやすいので、引き続き問い合わせをいただいている」と話している。
 物件の西側には北海道大のキャンパスが広がり、同大の南門付近には8月1日、子ども向け図書施設「こども本の森 札幌・北大」も開館した。世界的な建築家の安藤忠雄さんが設計し、北大に寄付した施設で、収蔵図書は約1万5千冊。名誉館長には、「テルマエ・ロマエ」で知られる漫画家、文筆家、画家のヤマザキマリさんが就任し、新たな文化スポットとして注目を集めている。

再開発ラッシュ

 札幌は長く、ニセコや富良野へ向かう観光拠点として見られてきた。このため、市内のホテルも中価格帯が中心で、外資系の最高級ホテルが少ない都市だった。しかし現在の札幌は、相次ぐ再開発で、その印象を一新しつつある。
 北海道庁旧本庁舎、通称「赤れんが庁舎」の前には、高さ約111㍍の「アーバンネット札幌リンクタワー」が竣工。オフィスや店舗に加え、札幌初進出となる「ハイアット セントリック 札幌」が今秋開業する。
 大通公園に面した旧北海道銀行本店跡地には、高さ約185㍍の複合ビル「SAPPORO ONE」の建設が進む。高層階には東京、京都、ニセコに次ぐ国内4軒目のハイアットの最高級ブランド「パーク ハイアット」が29年に開業する予定で、札幌の富裕層滞在の市場を大きく変えそうだ。
 札幌駅南口でも、駅と一体となった再開発が進む。関係者によると、道内最高層となる高さ200㍍以上の高層ビルが計画されており、大阪でもなじみのある「ザ・リッツ・カールトン」や「ウェスティン」「シェラトン」を運営するマリオット系の高級ホテルの進出が見込まれている。
 さらに、市内中心部で道路網の整備も進む。札樽自動車道の札幌北インターチェンジ周辺と札幌駅近くを約4・8㌔の地下トンネルなどで結ぶ「都心アクセス道路」が7月に着工した。完成すれば都心までの所要時間が夏は約10分、冬は約30分短縮される見込みで、道内各地のアクセスが向上する。
 観光地を巡るための街だった札幌が、滞在する街へと格を上げつつある。

新幹線延伸への期待

 その先にあるのが、北海道新幹線の札幌延伸だ。工事の難航で開業時期は当初からずれ込んだが、現在は38年度末ごろの開業が見込まれている。開通すれば札幌から倶知安までの移動時間が約25分に短縮。現在は2時間以上かかる世界的スノーリゾート「ニセコ」が、一気に身近になる。 
 市内の不動産関係者はこの新幹線開業について「ニセコでスキーを楽しみ、夜は飲食店や都市機能の充実した札幌に戻るという観光スタイルが現実になる。札幌とニセコが一つの観光圏になれば、玄関口となる札幌駅周辺の存在感はさらに高まるだろう」と期待する。
 再開発や新幹線延伸などでさらに魅力的な都市になりつつある札幌。関東や関西の富裕層がこぞってセカンドハウスを構える理由も見えてきた。
 北の都を「訪れる場所」から「帰る場所」へ。あこがれの北海道拠点の新たな波が訪れている。

新幹線駅の設置工事が進む札幌駅。駅向こうの中央の高層ビルは高さ175㍍で道内最高層の「ONE札幌ステーションタワー」
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