コクヨが梅田に構えた新本社と、門真市に誕生した新図書館。従来のオフィスや公共施設といった枠組みを超え、地域社会や未来の世代に広く開かれた新しい空間づくりが進む。


働く場所、学ぶ場所が変わる 大阪で生まれた「次世代空間」
オフィスや図書館といった、人々が集う空間のあり方を再定義する試みが関西で相次いでいる。コクヨは5月1日、大阪・梅田の「グラングリーン大阪」に新本社を開設し、自社オフィスを次世代の働き方の実証実験の場として位置づけた。また、門真市では同13日、ものづくり文化の育成を掲げた新たな市立図書館が開館した。用途や規模は異なるものの、いずれも従来の施設の枠組みを越え、地域や次世代に開かれた空間づくりを目指す点で共通している。(西山美沙希)
街へ開く梅田の最新オフィス コクヨ
文具・家具メーカーコクヨは5月1日、グラングリーン大阪パークタワー14階に新本社メーカー「KOKUYOHQ」を開設した。大阪本社の移転は約90年ぶり。黒田英邦社長は内覧会で「単なるオフィス移転ではなく、企業と社会のつながりを再定義する公開実験の場」と語った。働く場と体験のデザインで日本のワーク・ライフスタイルの変革をリードする様を、新本社で示す方針だ。
約4165平方㍍のワンフロアには、打ち合わせや交流に使う「パークサイド」、電話・会話を禁じた静寂空間「ツリーハウス」、150㌅スクリーンを備え、約100人規模のイベントも開催できる「マーケットプレイス」など、性格の異なる空間が並ぶ。働く人の行
動に合わせて空間を選ぶつくりで、社員だけでなく法人顧客やパートナー企業にも開放する。2021年に「街に開く」をコンセプトに改修した品川オフィスでは、社員のエンゲージメント指標の向上につながった実績があり、その経験を大阪でも生かす。
今後は、近隣企業や地域を巻き込む文化祭「CULTURE SNACK(カルチャースナック)」を、グラングリーン大阪と共同で10月に開催するなどさまざまな取り組みを行う予定だ。


次世代の工房となる門真の図書館
一方、門真市では5月13日、市立文化創造図書館「KADOMADO」が開館した。旧第一中学校の跡地に整備された施設で、外周にはらせん状のテラス「スパイラルガーデン」が巡る。館内にはスターバックスが入り、448席のどこでもコーヒーを飲みながら本を読むことができる。1階の本棚は「料理」「旅行」など暮らしの言葉で分類されている。
最大の特徴は、3階の「テックラボ」と4階の「クラフトラボ」だ。10〜18歳を対象に、3Dプリンターやプログラミング環境、動画制作機材を無償で開放する。クラフトラボの作業机には、門真市内のものづくり企業から寄付された端材や精密部品の廃材が並び、自由に使用することができる。
同市はパナソニックの発祥地であり、現在も多数の町工場が稼働する。本から知識を得るだけでなく、地域の技術文化を次世代に継承し、自ら形にする場としての役割を持たせた。館内には離乳食を持ち込めるスペースも併設し、多世代が長時間滞在できる工夫を施している。


行動と文化を変える空間設計
コクヨの新本社と門真の新図書館。片方は大手企業のオフィスで、もう片方は市民のための公共施設だ。しかし、どちらも共通しているのは、効率だけを求める場所ではなく、人が長く
過ごし、出会い、考え、つくるための場所を目指していることだ。
空間が変われば、人の動きが変わる。人の動きが変われば、仕事や学び、地域との関わり方も変わる。梅田と門真で生まれた二つの新しい場所は、これからの空間づくりを考えるヒントになりそうだ。
