能登半島北東部にある港町・能登町小木は、「日本三大イカ釣り漁港」として知られる。船上で急速凍結する「船凍(ふなごおり)するめいか」を特産とし、全国にその名を広く知られてきた。しかし、能登半島地震やその後の豪雨により、町や漁業は大きな被害を受けた。
震災から2年が経過した現在の状況について漁業会社・永宝水産の代表取締役社長、小川さんに話を聞いた。取材にあたり「暗い話になるなら控えたい」と前置きしつつ、「この2年、みんなで力を合わせてきた結果、ようやく前向きな兆しが見えてきた」と語る。
今期のイカの水揚げ量は、震災前の水準に戻りつつある。一方で、被災後に続いた人口流出の影響から人手不足が深刻化しており、復興の歩みとともに新たな課題も浮かび上がっているという。

地域によって復旧の進み具合に差はあるだろうが、能登町では、まだデコボコした道はあるものの、道路の舗装や瓦礫の撤去も段階的に進んでいるという。小川さんの自宅も、昨年12月にようやく解体が完了し、やっと更地の状態になったばかりだと話してくれた。
復旧工事や建設需要の集中により資材や人件費が高騰し、町では新しい建物が建つ動きはほとんど見られない。その一方で、更地になったことで、次の段階に進むためのステップに入ったと受け止める声もある。ただ、以前に比べて町の灯りは少なくなり、このままゴーストタウン化してしまうのではないかという懸念は続いている。

こうした状況の中では、すぐに人を増やすことは難しい。だからこそ「今いる人を減らさない努力が大事だ」として、「今ある資源に付加価値をつけて全国に届けることで、能登にお金と人を呼び込み、安心して暮らせる経済の循環をつくりたい」と話す。具体的な取り組みの内容は企業秘密としながらも、水揚げされたイカの鮮度向上につながる新たな試みにも挑戦しているという。
昨年は、大阪に本社を置く回転すしチェーン「スシロー」が、能登町小木港の船凍するめいかをトッピングに使った商品を展開し、大きな反響を呼んだ。こうした取り組みを通じて、能登の食材に関心が向けられる機会を広げたい考えだ。復興を後押しする企業や人の関与は着実に増えている。2026年を、そうした流れを具体的な成果として示す節目の年と位置づけている。

小木港では、昭和から平成にかけての最盛期に50隻以上あったイカ釣り漁船が、現在は7隻にまで減った。不漁に加え、地震や豪雨などの災害が重なり、長く苦境が続いてきた。それでも近年、「能登イカ」という地域ブランドが再び注目を集め始めており、港町に活気を取り戻すきっかけとなるかどうかが、いま問われている。
